───ふわりと身体が宙に浮かんだような感覚。
これは、エーテリオンの中…?
いや、違う…。

ふと映像が変わって、目を見開く。
あれは、墓石…と、みんな…?
墓石の名前をよく見てみれば、グレイ・フルバスター。自分の名前。
そうか、オレは死んだんだ。


「グレイ・フルバスターは神に愛され、神を愛し、その心は悠久なる空より広く───」


マスターが言葉を綴る。
みんながみんな痛々しかった。
オレのために、みんな…、


「ふざけんな!」


静かだった其処に、荒々しい声が響く。
声の主はナツだった。


「何なんだよ!みんなしてよぉっ!」


その表情は怒りに満ちていて。
乱暴に地面を踏みつけながら、グレイの墓石まで歩きだす。


『ナツ…』


呟いた瞬間、じわりと目に涙が溜まった。


「おらっ!」


オレの墓の前に供えてあった、赤い花の花束をナツは思い切り蹴った。


「よさんか、ナツ!」

「ナツ!やめて…っ!」

「貴様…!」


マスターやルーシィが唖然として声をあげる中、エルザがナツを止めに入る。


「グレイは死んでねぇ!」

「お願い、ナツ…っやめて…!」

「死ぬわけねぇだろーがぁあぁああ!」


エルザたちが暴走するナツを、取り押さえる。


「現実を見なさいよっ!ナツ!」

「放せ!グレイは生きてんだぁああ!」


必死に泣き叫ぶルーシィの言葉に、聞く耳を持たない様子でナツは狂ったように叫び続けた。


『なつ…っ、!』

「死ぬなんて嘘だ!おかしいだろ!あんなに好きだったのに!」

『オレは…っ』

「愛し、てんだよぉ…っ、!死ぬわけねぇ…!グレイはオレを置いて逝ったりしねぇ!」

『ナツの──みんなの未来のために…』

「グレイ、ぐれいぃ…っぅあぁあああぁぁあああぁあ!!」

『なのにぃ…っ』


オレは、こんな未来が見たかったんじゃない…。
オレはただ、みんなの笑顔のために…。
オレは、こんな…っ、
ふいに光が、オレを包み込む。
柔らかな、懐かしい、大好きな温もり。






 * * *

 * * *






「っ、此処は…」

「グレイ!」

「グレイーっ!」


名前を呼ばれて反射的に、そっちに顔を向けると、此方に向かって走ってくる仲間たち。


「何で…、オレ、生きて…っ!」


自分の手を見つめた瞬間、桜色が視界に入って。
そのまま視線をずらすと、ぼろぼろになったナツの姿。
気が付くと、オレはナツに横抱きにされていた。
オレは、生きている。
まさか、こいつ…あの魔力の中からオレを見つけたのか…!?


「ナツ、お前…っ、!」

「同じだ…」


呟きながら、ナツはオレを抱えたまま力が抜けたように、どさりとその場に腰を下ろした。


「オレだって同じなんだ…グレイがいない世界なんて嫌だ」


ぎゅっと痛いくらいに、抱き締められる。


「二度とこんなことするな」

「ナツ…」

「するなッ!!」


急に怒鳴られて、びくりと身体が震えた。


「ご、めん…」

「愛してんだよ…っ馬鹿」

「…っ」

「オレを置いてくんじゃねぇよ…っ」

「…ナツ、ごめんな」


ナツの肩に顔を埋めて、背中に手を回す。
そこから、ナツの体温が伝わって来て、自分は生きてるんだと改めて再確認する。

──また、こうしてナツの温もりに甘えることが出来る。
胸から込み上げる幸せを噛み締め、涙を溢した。


「なつ…」

「…」

「ありがとう…」

「ん」


そうだ、仲間のために死ぬんじゃない。
仲間のために、生きるんだ。

オレを救ってくれたナツのために、オレは生きる──。




















温もり

(共に生きようと決めた)









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