あなたが嫌いです。

そう心の中で呟く。
何度も何度も、自分を洗脳するかのごとく念じる。

私は、あなたが嫌いです。

常にそう想っていなければならなくなったのはいつからだろうか。

私には使命がある。
殺人者に死をもって罪を償わせるという、裁きを行う使命が。
だから、私は使命を全うする時以外で、幸福を感じてはならない。
私は決して満たされてはならない。
私の闇は照らされてはならない。
私の夜は明けてはならない。

なのに、

「キミに会えてよかった」

そう言って、あの男が笑いかけてくるたびに、私の全ては歓喜する。
あの日溜まりのような笑顔が、私に向けられるたびに、私の闇が照らされる。

私は、あなたなんか、嫌いです。

再びそう念じながら、私は彼の手を握る。
そうすると、必ずすぐに握り返してくる彼の手の体温が暖かくて、私はいつも泣きそうになる。

「私は、あなたが嫌いです」

声に出して呟いた。

「そうか。私は好きだよ。キミの事」

一点のかげりもない青色の瞳が、こちらを見つめてきた。

それが明るすぎて、本当に眩しすぎて。

夜の冷たさに馴れていたこの身が、少しずつ焦がされていくみたいで。

朝焼けなのだと思う。

この男の存在自体が。

月は夜でなければ輝けない。
太陽に近すぎる月は、その存在を隠してしまうと言うのに。
いくら逃げようともがけど、どこまでも夜を追いかけてくる朝焼けの光は、本当にこの男そのもののようだ。

「では、私を慰めなさい」

私の夜を、壊した罪は重い。





※※※


月企画様へ
ギガントマイナーな空月です。
だらだら書いてたら本編大変な事にナッチャッテタヨ。(6/25現在)



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