「こーぅら早水くん。なあにしてるのかなー」
人の下駄箱の前でコソコソと何やら仕組んでいる男子生徒を見つけてヒクリと引きつる笑みを浮かべた。 一つ下の学年であるハズのコイツが偶然俺の下駄箱の目の前にいるなんてことは考えられず、まあ妥当に考えてイタズラだろう。 ビクリと肩を震わせて恐る恐る振り返る圭介の耳たぶを思いっきり引っ張った。
「いったいたい、痛い!!」 「ほら、観念して言ってみろ」
お兄ちゃん怒らないから。爽やかに笑みを浮かべるも、小生意気にもフン、と視線を逸らす弟。 コイツは。 イラっとしたのでつかんだ耳たぶを引っ張り半強制的にこちらを向かせてやった。
「早水家の男児ならば逃げずに人の目を見て話す!・・・お兄ちゃん、そう教えたろ?」 「お兄ちゃんって年でもねえだろ。離せバカ兄貴」 「バカ兄貴・・・?」
ポカン、と口を開き怒りに手がわなわなとふるえる。 いつの間にこんな反抗的になったんだ。
「っあ、こら!圭介!」 「んじゃ失礼生徒会長様!」
スルリと俺の手からすり抜けてベエと舌を出して楽しそうに爽快に走り去っていく圭介の背中を追いかけることもせず見つめる。 本当、いつからあんなにひねくれてしまったのだか。 なんも変わりのない下駄箱を見る限りきっと未遂に終わったのだろう。 その場に一人残されはあ、とため息を吐き出す。
今日も学校は平和なようだ。
END
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