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「今までありがとう」

俺は今日この場所であんたにお別れを言いにきたんだ。
今までありがとう糞野郎。これでさよなら、お互い幸せだ。
なぜだか熱くなっていく目頭に俺は気が付かない振りをして、彼に背を向けて歩き出した。





最初は、好きだったのだろう。
たくさんの人間やポケモンに囲まれてるはずなのに
自分は1人だ、孤独だ、と感じてるその表情にいつしか俺は惹かれていた。
そして自分が彼を好きだと自覚したときから、俺はうすうす感づいていたのだ。

俺は、その孤独感に染まった顔に惚れたのだと。

「アオ」
「・・・グリーン、」

男の名をポツリと呼べば、頬に赤みが差す。
真っ暗な部屋、それでも些細なグリーンの変化に気が付いたのは、
俺の目がこの暗闇にすっかり慣れてしまっているせいで。

もう、1時間近くボウとしていた。
俺は後ろから抱きしめてくるグリーンの体温を感じながらポツリと声を漏らす。

「・・・どこにいたんだ」

香水の匂いが、移ってる。
嫌いなタイプに入る、グリーンから香る匂いに俺は眉を顰めた。
どうせ、また例の浮気だ。
そんなに俺が嫌いなら言えばいいのに。
もう十分孤独でないのなら、別れればいいのに。

「友達と飲み会」
「・・・そう、なのか」

充実してるんだろ
満たされてるんだろ
1人じゃないと、思えてるんだろ。
ならば、もうお前は俺の好きだったグリーンじゃないんだ。

それでも、俺が弱い振りをするのは・・・なんでだろうな。俺にもわかんないよ。

「・・・お前は、俺のこと・・・」
「好きだよ、大好き。愛してる」

間髪いれずに、いやもっと、俺のセリフを遮ってそう答えるグリーンに背筋が凍った。
俺には、重たすぎるんだよ、その愛が。
俺は、お前のこと当の昔に好きじゃなくなってたって言うのに。
俺も・・・厄介なものに好かれてしまった。





「好きだよ、アオ」

夕暮れの、誰もいない公園で耳元で囁かれるセリフにヒクリと喉を鳴らす。

逃げられない、でも俺は逃げてみせる。


ちなみに教えてやろう。とっくに俺は、お前が嫌いだよ。