「今までありがとう」
俺は今日この場所であんたにお別れを言いにきたんだ。
今までありがとう糞野郎。これでさよなら、お互い幸せだ。
なぜだか熱くなっていく目頭に俺は気が付かない振りをして、彼に背を向けて歩き出した。
一直線上にある、
最初は、好きだったのだろう。
たくさんの人間やポケモンに囲まれてるはずなのに
自分は1人だ、孤独だ、と感じてるその表情にいつしか俺は惹かれていた。
そして自分が彼を好きだと自覚したときから、俺はうすうす感づいていたのだ。
俺は、その孤独感に染まった顔に惚れたのだと。
「アオ」
「・・・グリーン、」
男の名をポツリと呼べば、頬に赤みが差す。
真っ暗な部屋、それでも些細なグリーンの変化に気が付いたのは、
俺の目がこの暗闇にすっかり慣れてしまっているせいで。
もう、1時間近くボウとしていた。
俺は後ろから抱きしめてくるグリーンの体温を感じながらポツリと声を漏らす。
「・・・どこにいたんだ」
香水の匂いが、移ってる。
嫌いなタイプに入る、グリーンから香る匂いに俺は眉を顰めた。
どうせ、また例の浮気だ。
そんなに俺が嫌いなら言えばいいのに。
もう十分孤独でないのなら、別れればいいのに。
「友達と飲み会」
「・・・そう、なのか」
充実してるんだろ
満たされてるんだろ
1人じゃないと、思えてるんだろ。
ならば、もうお前は俺の好きだったグリーンじゃないんだ。
それでも、俺が弱い振りをするのは・・・なんでだろうな。俺にもわかんないよ。
「・・・お前は、俺のこと・・・」
「好きだよ、大好き。愛してる」
間髪いれずに、いやもっと、俺のセリフを遮ってそう答えるグリーンに背筋が凍った。
俺には、重たすぎるんだよ、その愛が。
俺は、お前のこと当の昔に好きじゃなくなってたって言うのに。
俺も・・・厄介なものに好かれてしまった。
◇
「好きだよ、アオ」
夕暮れの、誰もいない公園で耳元で囁かれるセリフにヒクリと喉を鳴らす。
逃げられない、でも俺は逃げてみせる。
ちなみに教えてやろう。とっくに俺は、お前が嫌いだよ。