「またなん?」

「まただよ」

そういえば口には出さないもののまたか、と言いたげに息を吐き出す蔵ノ介をため息つきたいのはこっちだっつーの。と睨み付けてやれば、まあそんなピリピリすんなやだって。
優しい手付きで私の頭を撫でる蔵ノ介に目もくれずどうしたものかと唸り俯く。蔵ノ介はかっこいい。そして優しい。さらにしゃべれる男だ。そんな幼馴染を持った私はどれほどつらい学生時代を送ったか。まあ今はそんなことどうでもいいのだ。今語り合うべき事は、私の彼の異常なまでの浮気癖についてだ。私という彼女がありながら彼の浮気は日に日に増していっている気がするのは気のせいなのだろうか。否、それは気のせいではないはずだ。って、いうか。

「恋愛沙汰に無頓着すぎる・・・!」

今更やな。
そう呆れたように言う蔵ノ介に頭だけ寄りかかる。
くすぐったそうに身をよじりながら、私の頭を撫でる蔵ノ介に暢気なやつーと言ってみたらでこぴんされた、痛い。

「そんなに他の女がいいなら別れるって言えばいいのに。浮気よくないよ」

「自分も言えた義理ないやん」

「ならもうやめる」

「嘘やん」

「嘘」

なんやねん。そう言って私の頭にチョップを落とす蔵ノ介。
どこまで本気か知らないけれど、蔵ノ介は私に少し甘すぎる気がする。
慈しむ様に私を見つめ。
愛しむ様に頭を撫でる。
その手付きは本当の恋人にするように優しくそして甘い。私を抱く時も、こうしていちゃいちゃする時も、恋人のように甘いのだ。顔は悪くなく、むしろイケメンでもてるはずなのだからさっさと恋人を作ってしまえばいいのに。そうすれば私だって蔵ノ介に逃げるなんて事をせず、光と向き合うって言うのに。どこまでも甘い蔵ノ介に、少しずつだけれど確実に依存していっているのがわかって、心の中で息を吐き出した。


「蔵ノ介」

「ん?」

「私のこと好きなの?」

「好きやで、愛しとる」

「わぁ、ありがとう」

「超ながすやん」

「あのさ、やっぱりパーで殴られるよりグーの方が痛いよね、一番始めグーで殴っとけばよかったかなぁ」

「まあ、痛いっちゅーのはグーやろうけど、精神的にはパーのがくるわ」

「え?なんで?」

「音」

「乾いた音ってやつですか?」

「おん。心に響くわ」

そっか。曖昧に返事をして、ジイと蔵ノ介の顔を見つめた。
首を傾げ何?と尋ねる蔵ノ介の左頬に開いた手をペチ、と当てて、笑った。


NEXT