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あなたの居場所


『・・・』
『また泣いてるの?』

桜の木下。膝を抱えうずくまる少年の背に優しく声をあければピクリと震える身体。
今年でいくつになるのだったか。幼い頃うちへ引き取られたこの少年は驚くほど小さくて、幼かった。あれから数年、否数十年経った今でも彼はまだ幼く、そして小さい。


『アオ、姉さん』

一人頬を濡らすその姿を幾度となく見てきた。
孤独に震える彼を幾度となく抱き締めてきた。
この小さな少年が寂しくないように。壊れてしまわないように。

『ねえ、さん・・・?な、んで』
『薫、』

柔らかな髪を撫でてやれば心配そうに私を見上げる薫に微笑む。

『なんで、泣いてるの?』

歪む視界で、薫が泣きそうに顔を歪めていた。



◆◇◆



「アオ」
「薫」

僕は一度だって彼女を姉さんだなんて思った事はなかった。
血が繋がっていないことなんて始めっから知ってたし、僕は彼女を愛してた。
僕が幼い頃は、あの醜い大人達から随分僕を守ってくれた。それに彼女は僕に居場所を与えてくれた。

「スキだよ」
「かお、」

涙で濡れた頬を撫でればビクリと震える身体に首を傾げる。
何を怖がっているのだろうか。今更、何に恐怖してるのだろうか。


「アオ?」
「や、・・・かお、る」

わけがわからない。顔を不機嫌に歪めて、彼女の唇に噛み付くような接吻を落とす。懐かしい姉の匂いがした。