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焦がれる


「ネサラ」

「アオっ、俺を・・・うらぎ、ったのか」

「違う、俺はお前を愛してたよ」

「はん・・・どの口が言うか」

「ごめん、ごめん。」

ネサラの胸に突き刺したナイフをそっと抜く。ネサラの黒い服には赤黒い血が滲んでいた。

「愛してた。ずっと、今も。」

だけど、だけれども。

「狂ってしまった。」

自分の中に渦巻く黒い影が日を増すごとに体全体へと広がっていく事に恐怖を覚えた。
この狂気は何をしでかすのかわからない。

「ごめん、」

知ってるよ。鴉の王がこんなことで死なない事くらい。
まだ十分動けるし回復だってできるんだろ?

「―っは」


ネサラの片手が俺の首を捕らえた。
空気の道が絶たれる。

「っか、は」

手の力が抜けて、乾いた音を立ててナイフが地面に落ちる。
それもどこか遠くのことのように感じた。

「ひゅ、」

風が喉を通り抜ける。
体中が熱い。頭に霧が掛かる。何も、考えられなくなる。

「ネ、・・・サ、」

「アオ、俺には、お前を止める事なんかできない。安心して逝きな。」

視界が暗闇に包まれていく中でネサラが笑った気がした。

「あい・・・し、て」

プツン、思考は途切れ俺は世界から消えた

END