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赤い空


「レッド」

すぐ隣を歩く少年の名を小さく呼ぶ。
既に日は傾き、空は赤く染まり俺たち二人を赤く照らし出していた。

「何、アオ」

何もないかのように、答えるなよ。
正面を向きながら返事をするレッドに苛立つ気持ちを押し殺す。
どうして、なんでって、疑問の言葉しか浮かびあがらない。
何を口にして、何を言えばいいのか、わからない。


「・・・レッド、」

「アオ、聞いて」

俺の気持ちに気がついたのか、それとも悟ったのか。もしかしたら気がつかないまま言葉にしたのか。
それは俺にはわからないけれど、レッドは急に歩む足を止め、俺を横から見つめた。
俺もつられて足を止めるが、向き合おうとはしない。否、できなかった。


「後、少しだから。・・・待ってて」

「何、言ってんだよ」

誰が、待つか。
大きな、大きな建物を前に深く俺は俯く。
違うだろ。俺がお前を待つんじゃなくて

「もう、俺はお前に追いつけねえよ」

お前が振り返って戻ってこない限り、俺はお前に追いつけない。近づくことも、触れることもできない。
そう、気がつけばいつの間にかレッドは遠く離れた場所まで行ってしまっていたのだから。
置いていったのは、お前だろ・・・なあ、レッド。


「待ってて。」

「違う」

「違くない」

「違う、無理だ。お前は俺のずっと先を歩いてる」

「アオ」

お願いだから。
強く、ハッキリとした意志の篭ったレッドのセリフに言葉を返せなくなってしまう。
違うんだ、違うだろ。気がついてくれレッド。頼むから。


「待ってて。僕、勝つから。勝って帰ってくるから」

ヤダ。
咄嗟に浮かんだ言葉を無理やり飲み込む。
そして変わりに吐き出す偽りの言葉

「・・・勝てよ」

小さい頃からの、レッドの夢が今目の前にある。

俺に背を向け歩き出してしまうレッドに、俺は行くな、と叫ぶ勇気はなかった。

・・・また、遠くなる。
俺はその場でしゃがみ込み、気持ちを殺した。


END