log | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

もう終わり


いつの日か、ヒビキは俺を見下したような目つきでカラカラと笑った。

「先輩、終わらない恋なんて、ないんですよ」


だから先輩。
先輩の恋が終わるまで、ずっと一緒にいてあげますね

無邪気に笑う後輩に、当時の俺はそれでもいいと、強く、強く願ってしまった。

終わらない恋なんてない、ね。
本当、お前の言うとおりだ。・・・なあ、ヒビキ。




(俺の中で、キミへの思いも)
(俺たちの、この関係も)


「ヒビキ、もう終わりにしようか」

カラン、とガラスのコップの中で氷が溶けた音が静寂の中響く。
カウンターの隣側に座った男―高校時代の、一つ下の後輩に俺はポツリと、告げる。
随分冷めてしまった。
あの頃では考えられないくらいに、この男に対して恋焦がれることも、欲情することもなくなってしまった。
そう、俺の恋は既に終わってしまったのだ。

「先輩?」

「お前の言うとおりだったよ」

終わらない恋なんて、ない。
俺がお前に告白したとき、そう告げられた俺はそれでもいい、と強くお前を欲したんだ。
当時は、全てが、ヒビキの全てが大好きだった。
笑顔も、嫌がる顔も、その声や手さえも。
同じ男だなんて初めから頭にない。それが、恋だったから。

「大好きだったよ、ヒビキ」

ただ好きだと言い寄る男に付き合うだなんて、
相当な物好きか・・・それとも、期待してもよかったんだよな?
飽きることなく、最初に言ったとおり3年間ずっと俺の傍らにいてくれたヒビキに、最後に、と唇を落とす。
酒の味が、ただただ苦かった。

「ん、」

唐突に頭を押さえつけられて、そして乱暴に舌を絡め取られる。
目を薄く開けば、すぐ目の前には珍しく焦りの色をにじませた、困惑に顔を歪めるヒビキがいた。
今更、そんな顔するなよ。
どこか遠くでそんなことをボウと考える自分がいることに頭を押さえつけられながらも苦笑をもらした。

「ぅ、・・・んっ」

「っ、・・・は、っぱい、先輩」

唇を離し、どこか欲情した雄の影をちらつかせながらヒビキは囁く。
数十センチとないヒビキとの距離に、俺は何も感じ取ることはなかった。
以前までなら、きっともっと反応は違っていたのだろう。この男に、恋をしていた頃の俺ならば。

「先輩、いやだよ俺」

「ヒビキ?」

予想だにしていなかった拒絶の言葉に、静かに目を見開いて息を飲む。
ヒビキは、というとさもおかしそうにクスリと笑い、そして俺の唇を人差し指でなぞるんだ。

「俺、逃がさないからアンタの事。此処まで付き合って、はいさようなら?
そんなこと、俺がするとでも思った?」

イヤだな、俺を安く見ないでよ。
カラカラと笑いながら俺の首へ腕を回すヒビキに身体が強張るのを感じた。
どうゆうことだ、どうゆう意味で、ヒビキはこの言葉を口にしているのだろうか。
俺には、わかりようもなかった。

「見返り、もらってないしね」

俺の3年間の見返りは、高いよ?
そう言って笑うヒビキに俺はどうしようもない不安に苛まれる。
一体何を、何を求めるというのだ。とてつもなく、嫌な予感しかしなくて、ギュウと目を瞑った。

「教えてあげる。俺の求める見返りはね、」

アオ、あんただ。

どこか遠くで、助けを求める声が聞こえてきた気がした。


「終わらない恋はない」

そういうのなら、俺は待つ。
お前の恋が終わるまで
お前が、恋に飽きるまで


END




遊びだったはずが本気になっていたと気がついた瞬間

「もう、逃がさない」


お題提供:DOGOD69様
終わったね→終わらない恋はない