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オレだけ、を


赤×主前程


俺には兄貴がいる。
兄貴は俺と同じピカチュウ使い。
兄貴はこの地方の、チャンピオン

兄貴じゃなくて、


「レッド」

隣の部屋から聞こえてくる、兄貴の友人の声に俺は目を細めた。
部屋と部屋との仕切りの壁が薄いためにこっちからもあっちからも音は駄々漏れ。
会話する声さえも聞こえてきてしまうことを、きっとアオさんは知らないのだろう。

「マジレッド」

カラカラと声を上げて笑うアオさんはきっと今、兄貴に抱きついているのだろう。
壁が薄いからこそ、俺は知っているんだ。
アオさんが、兄貴を好きなことも。
アオさんが、兄貴と付き合っているってことも。
俺がそれを知っているっていうのはきっとアオさんだけが知らない。
兄貴は、壁一つはさんだ俺に知らしめるようにアオさんと触れ合うのだから。

「アオ、ちょっと待ってて。コンビニ、行ってくる」

「コンビニ?なら俺も行くよ」

「いいから。・・・待ってて」

有無を言わせない兄貴の言葉にアオさんはきっと渋々といった感じで兄貴を見送るのだろう。
ガチャン、と閉まった俺の部屋の扉の奥で、兄貴の部屋の扉が閉まる音が聞こえてきた。

「兄貴の、バーカ」

小さく呟く。
大事な宝物は、自分の手で守らなくちゃ壊されちゃうって事、わかってないのかな?
今までだって、そうだったでしょ。
幼い頃集めたおもちゃだって、大事な本だって、今までに好きになった女の子だって。
お互いが欲し合って、壊しあってきた。

もしかして、兄貴は・・・そうゆうのがお好み?
自分の大事な大事な子が、ほかの男・・・しかも、弟に壊されているのを見るのが、好きなのかもね。
俺は一言もう一度悪態を吐き、―家の玄関の扉から兄貴が出て行くのを確認して、自分の部屋の扉を開けた。


俺には兄貴がいる。
兄貴は俺と同じピカチュウ使い。
兄貴はこの地方の、チャンピオン

いつだって、俺のほしいもの全てを持っていく兄貴。
おもちゃ、本、好きな女の子、地位や名誉、期待の眼差し、好きな男。

劣等感でいっぱいいっぱいの俺は、そのうち爆発してしまうんだ


「ねえ、お願い」

俺だけを、見て


END