瞼にKiss
「アオ」
ふわりと、俺の名を呼ぶ声が空気を震わせた。
とても優しい手が髪の毛に触れる。かと思えば、まるで壊れ物を扱うかのようにその手は髪を梳き始めた。
けして女みたいに長いわけではない髪。だけど質感はいいと褒められた最近切ったばかりの髪。
それを撫で付けるようにして触れるレッドの手に目を薄く開いた。
「レッド、眠いんだけど」
「アオ」
ベッドの上で寝転がる俺のすぐ隣で俺と同じように寝転がり片腕で肘をつき、俺を優しい眼差しで見つめるレッド。
まるで俺の声なんて聞こえてないように、ただただレッドは俺の名を呼び続けている。
「レッド、眠いから寝かせて」
「アオ」
重たく落ちてくる瞼。
なんだか、このまま落ちてしまってはいけないような気がした。
「レ、」
「寝たいなら、寝ればいい」
そうやわらかく、優しい笑みを浮かべるレッドはそっと俺の瞼に唇を落とした。
こんな笑み、レッドがするなんて貴重だ
そんなことをどこか遠くで思いながら、俺はそのまま深い深い暗闇に堕ちていった。