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狂っていたのは××



「今更気がついたのか」

どうしようもないほどおかしい。
おかしいあまりに若干震えてしまった声に構わずクツクツと喉の奥で笑った。
俺の腕の中で無表情に涙を流すアオの首元に顔を埋めて、匂いを嗅ぐ。
ああ、いい匂いだ。

「レッドさん」

掠れた声でお前が呼ぶのはまた赤の色。
おかしくっておかしくって仕方のなかったはずなのに、急激に自分の中から冷えていく感覚に目を細めた。
せっかく上機嫌で笑えていたのに、また赤の色に邪魔された。
おもしろくねえよなァ。

「レッドさん、レッドさん・・・レッド、さ」

「いい加減黙れよ、アオ」

後ろからアオの両頬を片手で掴み、無理やり首だけ後ろを向かせた。
目に涙を浮かべながら、目元に笑みを浮かべるアオを冷めた目で見つめ、その口に噛み付いた。
視界の端でアオの腕からピッピ人形が落ちるのが見えたけれど、俺には関係ない。
そんなもの、捨ててしまえばいいんだ。

「・・・ん、っ・・・っ、!」

口内に鉄の味が広がっていく。
痛みに顔を顰めるのは、アオ。
先ほどまでの涙とは、また別の涙を目に浮かべながらアオは逃げるように身体をよじり、舌を縮こめる。
そんな行動を起こすアオをきつく抱きしめる。ああ、愛しい愛しい愛しい。
なんて可愛いんだ。俺のせいで涙を流し、俺のせいで嫌な顔をする。
どうしようもなくアオのことが愛しかった。

「っん、ぅ・・・は、なしてくださっ、・・・はな、せ・・・!」

ポタポタ。
ポタ ポタポタ。
地面に水が落ち、跳ね返る。

ポタポタ ポタ。
ポタ ポタ ポタ。
最初は一つ、二つ。
次第にたくさんの痕を床に記していく。
空から降る雫は、いつしか数え切れないほどになりアオの涙の痕を消していた。
消せばいい。あいつのために流した涙の痕なんて。
俺のためだけに作ればいい。俺のためだけに泣け。叫べ。許しを請え。

「知ってるか、アオ」

俺の腕の中でアオは虚ろに、濡れていくピッピ人形を見つめていた。
雨の雫がアオの頬を伝う。どこ、見てるんだよお前は。
どこ、見てるんだ。

「・・・アオ」

首筋に顔を埋める。

知ってるか、アオ。
ずっと、お前だけを見てきた。
ずっと、赤色だけを見てきたお前を見てきた。
全て、見てきた。
全て、俺は知っている。

「知ってるか、アオ」

雨のせいで身体が冷たい。
水を含んだ服が重たい。
空が、黒い。

「赤色は、黒なんだぜ」

目を見開いた、驚いた表情をしたアオと初めて、目が合った。


END