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裏切りの自己愛者


私は自分が好きだ。
何にも変えられない。
自分が大切だ。
何にも劣らないほど。

「なんで泣いてるの?」

それだけど、今ばかりは自分がダイキライだ。




「ゲンガーが持ってたオボンの実を虫食いで食べられちゃってさ」

太陽が落ちかけ、空が茜色に染まる午後5時30分。
向かい合った形で置かれている客間のやや高めのソファに腰かけるマツバさんはとても楽しそうに話し続ける。
本当だったらマツバさんの目の前に座るはずの人物は床に伏せ、赤い血溜りを作っているっていうのに。

「お茶、お待たせしました」

どうやら私も彼から流れ出ていく血を脳内で描いて行くうちに気がつけば正常な判断さえもできないほどに気がおかしくなってしまったようだ。
コトリと小さな音を立てながら今淹れたばかりのお茶の入った湯飲みを2つ机の上に置く。
マツバさんはニコリと笑みを作るとありがとう、と言った。


「僕ね、キミのそうゆう目好きだよ」

とてもとても、やわらかく言う。
好き、か。私は今、どんな目をしているのだろうか。
なんだかとてもうつろで、そして眠たい気分。このまま眠りについて、ずうとずっと目を覚まさないでいたい。
誰にも睡眠を邪魔されずにずっと・・・ずうっと。

「ねえ、アオくん」

酷く冷えた手。
凍えるほどに冷たい手で腕を引かれ目を見開いた。さっきまでの睡魔はどこかへ消え去り、そして代わりとばかりに襲ってくるのは得体の知れないもの。
なんだ、なんだ。なんなんだこれは。これの名を私は知らない。身を持って、体験したことがない。

「キミがすきなのは、誰?」

―ああ、わかった。私はこれを体験したことがあるじゃないか。
恍惚に頬を染め、口元に笑みを浮かべる。
すぐ近くに答えはあった。見つけた、此処に在った。
まるで引き込まれるように。吸い込まれるように、彼の瞳の色に飲み込まれるように。

「貴方です、マツバさん」

マツバさんの首元へ腕を絡めた。

「よかった、僕も」

二度目の恋をしよう。


END

博士の助手主設定

自己愛者主→主が博士殺害→松葉と隠蔽→主なんかおかしくなる→松葉さん誘惑→主落ち