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※暴力表現有り/キャラがキャラに暴力表現有



「っ、ぐ・・・」

腹に鈍い痛みのち呼吸が詰まる感覚に声を漏らせば暗闇の中、喉の奥で笑う気配が空気を揺らした。
グリ…と頭を踏みつけられる感覚。
しかしそれよりも腹を殴られたことよって呼吸器官が潰されたような生死に関わるようなそんな錯覚を起こし必死に空気を取り込もうと強く喘ぐ。
されども空気は肺には送られてこない。空気が、欲しい。
口の端から見っとも無く口の中の粘液を流しながら空気を取り込もうと肩で息をし目には生理的な涙を浮かべる。
ああ、こんなことならば腹筋くらいつけておけばよかった。
呼吸することができないことによる恐怖にガタガタ歯を鳴らしながらただ頭を踏みにじられるがまま。
上から踏みつけられることによりコンクリートに強制的に押し付けられる片頬は冷たく、そして痛い。
ああなんで。なんでこんなことになってんだ。おかしいだろ。誰か、誰か。助けて、くれ。

「アオ」

「・・・ぁ、」

漸く足をどけたと思ったら次は俺の前髪を掴み少しだけ持ち上げながらしゃがみこむ目の前の男に目を見開く。
剥がれてしまいそう。毛根ごと引っ張られるようなそんな鈍い痛みに顔を顰めながらヒリヒリと痛む喉から必死に声を絞り出す。
何か。何か答えなければ、また殴られる。
珍しく楽しそうに細められた瞳から覗く赤にヒクリと喉を震わせながらも目が離せなくなるのは何故なのか、わからない。
だけど、もしもこの瞳に魅せられなければ。
もしかしたら、俺はもっと・・・。

「何を考えてるの。・・・ねえ」

「レ、」

また殴られる。
目の前の男の瞳から笑みが消えうせていくのに気がついてしまえば最後。サアと血の気が引いていく感覚に無意識に歯を食いしばっていた。

「アオは、僕のこと好き?」

パクパク、まるで酸素を求める金魚のように開閉する口に次の瞬間鈍い、焼けるような痛みが走った。
喰らいつくように噛み付くレッドにヒュ、と喉を鳴らせばすぐ至近距離で少しだけ開いた赤の瞳と視線が絡んでしまう。
ああ、どうせ。
どうせ、最初から答えなんて聞いていない。きっと俺は、逃れることさえかなわない。

「・・・」

なぜだか酷く悲しい気持ちになって。
乾いた唇が触れ合う隙間を自ら埋めた。


聞こえてますか

ザリ…砂利を踏みしめる音。
暗闇に差す赤みの掛かった光。
照らし出される汚い俺と、赤く染まったレッド。
あれ、一体。何が、どうなって。

「大丈夫か、アオ」

「グリ、・・・」

落ち着き払った様子の友人の姿に冷たく凍て付いた感情がドロドロになって融けていく。
綺麗な緑色の瞳を細めて笑うグリーンは手に持った何かを遠くへ投げ捨て、何事もないかのように俺の腕を自らの首に回して立ち上がらせた。
―さも、何もなかったかのようにして。

「なんで・・・」

「助けに来た」

喜べよ。
無邪気に笑うグリーンをどこか酷く遠くの世界のことのように見つめる。
そう。まるで一枚の液晶をはさんだ他の国の戦争のドラマように。
薄っぺらくて安くて大量に印刷された絵本のように。
一コマ一コマ、ゆっくりと送り流す。

「もう、安心しろ・・・アオ」

まるで絵本の王子様のように、深い口付けを交わして―そしてプッツリ、意識は途切れた。


一コマ、巻き戻す。


…そしてグリーンは手に持った何か遠くへ投げ捨てた。
そのとき、確かに見たんだ。

「赤、」

それが、赤く染まっているのを。
そしてグリーンはそこには何もないかのようにコンクリートに倒れ付したレッドの手を踏みつけると俺に手を差し伸ばした。


「安心しろよ」
笑うグリーンに泣きたくなった、夕暮れの廃屋


END

「ただいま、アオ。今日は久しぶりに骨のあるトレーナーがジムに来たんだぜ」

足首に繋がれた鎖は、いつまでたっても取れない。
嗚呼。誰か俺の声が、聞こえてますか?


「助けて」

今度こそ終わり。