log | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

color edition


※GL


「・・・」

冷たい手に触れる。
微かに震える肩を自分で抱きしめる夜はもう慣れた
そしてキミが、隣にいない朝を迎えるのにも。






『私、旅に出る』

それは唐突に告げられた。
傍らに見たことのないポケモンを連れて、満面の笑みを浮かべて、旅の支度をし終えて。

『え・・・嘘、本当に?・・・いつ出るの?』

『もう今日のお昼には町を出ようかなって』

私たち、親友だったよね?
ストンと心に冷たい水が波紋を広げていく。
ずっと隣にいて、ずっと一緒で、同じ時間を共有してここまで来たんだよね?
彼女は笑みを浮かべながらこれから起こりうる数々の出来事を想像しているの。
私はそんな彼女の姿を見つめるばかり。彼女がこれから何を体験して、何を感じるのか、さっぱりわからない。
こんなこと、今まで生きてきてなかったよね?ずっと一緒だったもんね。ずっと、ずっと生まれてからずっと。
私たち、普通の友達以上に、親友以上に固いきずなで結ばれていたはずなのに。


「そんなこと、一言も言ってくれなかった」

私と、彼女と、もう一人の幼馴染と。
幼いころ、3人で撮った写真を見つめながらあーあ、と声を漏らす。
たかが2年、2年の差を生じてこの世に生まれてきたことをこれほど恨み憎んだことはないだろう。
もしも私が彼女と同じ、彼と同じ年に生まれていたのならきっと私は彼女のかけがえのない親友となっていたはず。
男なんかよりも大切で、重要で、いとしい存在になることができたはずなのに。

「なんでヒビキくんなのかなあ・・・」

苛立たち気につぶやくセリフ。
写真に写る、もう一人の幼馴染であるヒビキくんの顔は油性マジックで消されていて、そこに写るのは笑顔の私と彼女だけ。
ヒビキくんなんていらなかった。だって私から大切な、大事な彼女を奪うんだから。
でも。
町で一人残って嘆く日々はもうおしまい。
私もようやくこの年を迎えたの。

「ねえ、アオ」

待っててね。
今すぐ探し出して、迎えに行くから。
旅のことなんか、ポケモンのことなんか、ヒビキくんのことなんか・・・すべて、忘れさせてあげる。

「スリーパー、行こうか」

ああ。
もうすぐ私のモノクロの日々が終わりを告げる。


END

コトネ(2歳下)→主⇔ヒビキ(同い年)