被害者Aと友人Y
※隣人H続編
「おい、大丈夫か?」
顔色悪いぞ。
そう言って眉間にしわを寄せる友人、ユウキにヘラリと笑って見せる。
土曜の昼下がり、喫茶店の窓際の席に座る俺とユウキはだらだらとしゃべりながらそれぞれの時間を送っていた。
ここ最近ちゃんと寝れなかったせいだろうか。体調がすぐれない。
何もかも、すべてストーカーまがいな嫌がらせのせいなのだけれども。
「今日はもう帰る?」
「え・・・。まだ帰らない」
心配して言ってくれているのだろうけれど、でも家になんて帰りたくない。一人になりたくない。
一人になれば嫌でも思い出したくなるし、何より怖い。どっから誰がどいつが俺のことを見張っているのか。考えるだけで気持ち悪い。怖い。
もう逃げ出してしまいたかった。
「お前最近おかしくないか?大丈夫か、なんかあった?」
「いや・・・別に、大丈夫」
嘘つくなよ。
ユウキはそう言って刺さるような視線を送る。心臓がジクジクと痛む。
「言いたくないなら、別にいいけどさ・・・少しは頼れよ?」
今酷い顔してるぞ?優しく笑うユウキに泣きそうに顔をゆがめる。
頼んだ、氷が解けて薄くなってしまったコーヒーを口へ運ぶ。味がしない。随分時間が経ったようだ。
言おう。言ってしまおう。
頼ってしまおう。目をつぶり息を深く吸う。目を開けた目の前には大学の友人の姿。頼っても、いい相手。
少しだけ軽くなった気持ちが風を通した。
「ごめん、聞いて。」
「うん、聞く」
「・・・あの、俺・・・」
もしかしたら、ストーカー・・・されてるかも。
震える唇で、そう伝えようとした。時だった。
「・・・?」
不意に外側から窓をトントン、とたたかれた。
小さな衝撃に肩をビクリと震わして反射的にそっちを振り返る。
そこにいたのは、ニイと笑うよく知った人物で。
「ホム、ラさん?」
赤を基調とした服を纏い、片手をポケットに手を突っ込みこっちを指差すホムラさんにコクンと小さくうなずく。
多分こちらへ来ても大丈夫か聞かれたのだろう。
ユウキも随分ビックリしたようで目を丸めびびったぁ、と小さくつぶやいた。
「よおよお後輩共」
完全に相談するタイミング失った。
でも、どこかでホっとしている自分がいるのも嘘じゃなくて。
バイト帰りなんだと言って笑うホムラさんはコーヒーを一杯頼むと、で、二人で遊んでたわけ?と楽しそうに訪ねてきた。
結局相談できずの一日だったが久しぶりに3人で遊んだ今日は、本当に久しぶりに楽しくってたくさん笑った。
何気ない毎日を、死ぬ気で生きる
END