惚れた方の負けってやつさ
「え?私があなたに本気になるとでも思ったの?」
今渡されたばかりの指輪を手の中でクルクルと回しながら本当に驚いたと言わんばかりに目を丸める。
ひんやりと銀の感触が手を冷やし、重さ、質感が本物だということを証明する。
この業界にいて、更に私やこの男くらいに売れてきてしまえばまあそこそこの給料は貰えるし金にも女にも男にも困るようなことはない。
欲しいものは手にして、すぐに飽きる。どんな人でも大して変わらない考え方だろう。
んま、だからこそ手に入らないものにはしつこくなるのだけど。
「もう十分遊んだよね?私たち。私はもう飽きたな」
「そ、・・・な、本気で言ってるんスか・・・アオ」
「本気だって。あなただって今までずっと同じことしてきたでしょ?」
私のこと、悪く言えないよね。
絶望に顔を青く染める黄瀬に笑って見せる。何が一緒に暮らそうだ。ばかも休み休みに言ってほしいものだ。
「黄瀬君こそ本気?私に恋でもしちゃった?」
「っ、」
からかう様な私の言葉に押し黙る黄瀬。
図星か、とため息を吐き出して黄瀬の腰へ腕を回した。
「りょうた・・・ごめんね・・・?私、遊びとしか思ってなかったから」
泣きそうに顔をゆがめる黄瀬にカラカラと笑う。
どうだ、黄瀬。これが裏切られる辛さなんだよ。
1人の少女がなみだを流している。
私はあの子のことが好きだった。綺麗に笑う子で、あの子は黄瀬に本気で恋をしていた。
本気になってしまった、あの子が、黄瀬がいけないんだ。本気で人を好きになるって、とてもリスクが高い。
盲目的に愛す彼らは一体どこへ向かっているのか、どうしようもない虚無感に襲われて、なんとなしに震える黄瀬を優しく包み込んだ。
end