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お兄ちゃんとお呼びなさい


「不純異性交遊は厳禁だと、前にも言わなかったか」

放課後の教室、美奈子と雑誌を見ながら談笑している最中のことだった。
突然教室の扉を開け、俺と美奈子以外無人の教室へはいってきたのは佐藤先生だった。
センセの一言に今までの楽しい気持ちが一瞬で萎える。台無しだ。

「そんな。俺たちいやらしいことなんかしてないよ。あのね?むしろ青春の一ページ更新中」

「!、・・・佐藤先生」

驚く美奈子を横目に、いつもの冷えた目で俺を見つめる佐藤センセイを見つめ返す。
美奈子が絡むと、すぐこうなる。面倒な人だな。
はあ、とわざとらしくめんどくさそうにため息を吐いて見せた。

「そんなに美奈子大事?ほんと、昔っからそうだよねアオくん」

「桜井、アオくんじゃない、佐藤先生だろう」

お前は、昔っから人の話を全く聞かないやつだったものな。
そう吐き捨てるように言うアオくん。いつも言われっぱなしだけど、なんだか今日は引き下がりたくなくて。眉を寄せて不服気ににらみつけた。

「いい加減気が付いたら?一番美奈子の自由奪ってんの自分だってことにさ」

「余計なお世話だ。学生なら学生らしく勉学に励んでいればいい。それが不服だといいたいならさっさと社会に出たらいい」

「る、るかくん、佐藤先生も!教室もどろっ」

必死に俺の服の裾をつかんで懇願する姿にズキリと胸が痛んだ。
美奈子の柔らかい髪の毛をサラリと撫で上げて、先、帰ってて。と笑いかける。ここまで言われて素直におうち帰れるほどまっすぐ育ってない性質なんだ。
ごめんな、と困ったように俺を見つめる美奈子の背中を押した。

「廊下は走らないように。気を付けて帰れ、小波」

「・・・はい。あのっ、・・・喧嘩しちゃ、だめ・・・だよ」

アオくん。
消えてしまうほど小さな声でそういう美奈子に、アオくんは驚くほど柔らかく笑った。
うちの生徒が見たら卒倒してしまうほど。誰だと疑うだろう。氷室センセイと肩を並べて、ロボットと言われているあの佐藤先生がこんなにもきれいに笑ったのならば。
ズキリ、と胸が痛んだ。なんだ、この痛みは。・・・そうだ、小さなころは俺にもあの笑顔向けてくれたっけ。
出て行ってしまった美奈子に実に子供らしい、かすかな嫉妬心を覚えた。

「・・・へえ。俺には怒って、美奈子には笑うんだ。アオくん?」

「なんだ、やきもちか?琉夏」

ばかにしたように、だけどどこか温かみのある笑み。
笑ったアオくんに言葉を失い、口をつぐんだ。これだから、困るんだ。

「・・・美奈子が絡みだすと、厄介なんだよなぁ・・・」

「誰が厄介だって?」

「・・・いや」

俺は美奈子も好きだし、アオくんも好きだ。
二人とも大切な幼馴染だ。アオくんが教師になっていて、びっくりして。そのあと美奈子が帰ってきて。

「また、4人で笑いたい」

コウと、俺と、美奈子とアオくんで。
無理かな?ヘラリと笑って、首を傾げる。アオくんは視線を外して、何も答えてくれはしなかった。

end