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バイト少女とA


「ごめんっ、今度の土曜バイトで埋まっちゃった・・・!」

そう言って頭を下げる彼女の姿を今までどれほど見てきただろうか。
毎度謝罪の言葉を聴かされ、そのたびに俺が不機嫌になれば泣きそうな顔をして本当にごめんね、なんて。


「・・・あかや?」
「なあ」

俺が不機嫌になっていくのに気がついたのか、心配そうに眉を寄せながら俺の顔を覗き込むアオの腕をとる。細い腕は俺と比べ物にならないほどよわっちくて、折ろうと思えば今にでもへし折れるほど。そりゃそうだ、男と女違いがあってあたりまえ。
俺とアオ、違いがあって当たり前だってのに。

「アオは俺とバイトどっちのほうが大切なわけ?」
「え、」

まるでどこかのドラマの面倒くさい女みたいなセリフを気持ちのまま吐き出して、ああ何言ってんだ俺、なんて今更少しの後悔。けれど、これで俺の気持ちが伝わったらいいのに。俺との時間のほうが大切だって言ってくれたらいいのに。
アオの腕をつかんだまま、なあ答えてくれよとつぶやく。掴まれた腕が痛そうに顔をゆがめるアオの目を見つめた。

「あかや、痛い、」
「・・・、」
「・・・赤也?」

俺たち、付き合ってるんだよな?
視線をそらして、俯く。気がつけばアオの腕は離していて、俺とアオの間には不自然に間が空いていた。

「赤也、」

ふわりと香るアオの匂い、暖かい体温にに抱きしめられたと気がつく。
俺よりも小さいアオの体に、抱きしめるっていうよりも抱きつくだよななんて一人ぼんやりと考えて、少し笑った。

「ごめんね」
「・・・」
「好きだよ、赤也」

小さい体のくせに、どうしようもないほど暖かい。
しょうがねえなと笑みを浮かべながら、抱きつく体をそっと抱きしめた。


END