月の翳る
!失恋
『悪い』
同期でもあるリヴァイに思いを伝えたのはつい先刻の事だった。
長年心の内に秘めてきた思いは、彼が外へ行くたびに。
巨人が攻めてくるたびに、大きく鼓動し跳ね上がった。そうゆう時、潰れてしまいそうなほどに心臓が縮こまって壊れてしまうのではないかってほどに頭がおかしくなる。
伝えるつもりなんてなかった。
伝える勇気なんかなかった。
・・・届かないことくらい、わかっていたから。
「心臓を捧よ、」
私たちの命は私たちの命であって、私たちの命ではない。
もう何年も前に、心臓は捧げた。
私たちの命は少しでも人類のために巨人の秘密を探ること。そこに、感情はいらない。必要ない。
色恋沙汰は無用なものなのだ。
「どうかご無事で」
満月に向かって敬礼をする。
特殊部隊班ーリヴァイ班は今夜出発する。
どうか、どうか彼があの巨人たちに食べられてしまわないよう。どうか、
『死ぬな』
小さな背中を向けて歩き出してしまうリヴァイの乞うように呟かれた言葉が耳にこびりついて離れない。
もし、巨人なんていない世界だったのなら。
「・・・っ、ぅ」
願わくば、あなたが生きて帰ってきますよう。
雲に隠されてしまった月に嗚咽を噛み殺しながら、1人敬礼を続けた。
END