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伝説の彼


旅をしていたら出くわした、伝説の彼。
あわてて取り出したポケモン図鑑に表示される番号と名前に世界が止まったように感じたのはもう何年も前の話だった。
伝説を捕まえるとか、捕まえないとかそう言った考えが頭をよぎったけれど、彼の様子がおかしかったから。繰り出そうとした相棒のモンスターボールも元に戻して伝説の彼へ駆け寄る。酷く、弱っていたのには心底驚いた。


「ラティオス」

勝手にボールから出てきてすり寄るラティオスに笑みをこぼす。
約3年前。この場所であなたと出会い、誓い合った。
―私はあなたを手には入れない。
あなたは、私が死ぬときに隣にいる。

「ありがと。・・・さよなら」

普通に出会って。
普通に旅をして。
―あなたと、一緒に戦いたかったな。

木陰に腰を落として、木に背中を預ける。
春の風が頬を撫ぜる。ラティオスの少し低い体温が心地よく深い眠りへと誘った。





『俺はあなたのポケモンになりたかった』

横たわる愛しい人の頬をそっとつつく。もう、反応はなかった。