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ディスプレイに表示された時刻を確認する。
約束の時間まであと10分、と言っても待ち合わせ場所は私の家の前なのでそんなにピリピリする必要もない。とは言ってもそんなにゆっくりできる時間でもないので最終チェックとばかりに、鏡の前で服装や化粧も髪型もおかしいところはないか確認する。うん、大丈夫そうだ。こういうのはあんまり細かいところまで気にすると、とことん気になってしまうからある程度がいいのである。そう、ある程度…ある程度、うーん。髪はやっぱりまとめた方がいいかな、この服装だとまとめると少しスッキリしすぎか?いや、でも今日はあったかいしぐっと首元を出して…

「今日夕方冷えるらしいで、下ろしとき」

「そうだねぇ、冷えるなら上着も用意して…って、はぁ?!」

椅子に腰をかけてにこやかに手をひらひらさせる人物に目を剥く。そこにいたのは10分後落ち合うはずの人物で、今日も今日とてナチュラルにイケメンである。

「かっ、勝手に上がってくんな!」

「わっ、こら、ぬいぐるみ投げんな!ちゃうねん、家の前で待ってたら凪のおかんが、あら蔵ノ介くん上がってーっていうから!」

俺やって準備中の女の子の部屋上がるんはマナー違反やと思うねん。そう神妙そうに話す蔵ノ介に肩の力が抜けていく。
にしてもお母さんもお母さんだ。ご近所さんのため、ゴミ捨て場が同じなのでよくお母さんと蔵ノ介は顔を合わせていたみたい。その都度蔵ノ介君と会ったわよーなんて報告を受けていた私だが、お母さんは私と蔵ノ介が疎遠になっていたことを知ってるのだろうか。
仮にも他に彼氏がいる娘の部屋に快くあげる母親って、と頭を抱える。

にしても蔵ノ介よ。本当、謙也レベルでデリカシーがない。それ謙也と同等だよ、と言うとあからさまにショックを受けたかのように顔を歪める。謙也と同じだと言われた事がよほど嫌だったのか蔵ノ介は肩を落として部屋を出ていく。その後ろ姿を見守りながら、一体なんだったのかと声を出して笑った。