ぎし、ぎし
意識の遠くの方で音が聞こえた。
瞼は重たくて開かないし、身体はピクリとも動かない。意識はまるでふわふわ空に浮かぶように微睡む。動きたくないし、まだ目を覚ましたくなんてない。もう少しこのまま、寝ていたい。

ふかふかの毛布にくるまれて、頬には何か温かいものが触れている。髪の毛をすくように頭を撫でるのは一体だれ?いや、別に誰だっていい。眠たいからこのまま、また眠りについてもいいよね。
意識が沈んでいく。深く、深く沈んでいく。沈んでいく途中で夢を見た。温かいお風呂に入る夢。誰かの手が伸びてきて口の中へ何かが放り込まれる。それは、甘い。蕩けるようにふわふわでとろとろで、頭が痺れるように甘い。もっと欲しい。そう強請って、手招くその手に舌を這わした。人差し指の付け根から腹、指先を舌でなぞる。少ししょっぱい。けど、指先は甘い。もっと、もっと甘いのが欲しい。求めるように、その奇麗な指先を咥えてそのまま舌を絡ませた。ああ、甘い。まるでそのまま舌まで蕩けてしまいそうなほど甘い。甘くて、甘くて、甘ったるくて、吐き気がした。

「ハル・・・ハル・・・、ああ・・・ほんまに・・・っ、は・・・ぁ、い、っ・・・く、」

名前を呼ばれるたびに、吐き気がするほどの甘さが身体を支配する。
手も足も頭さえも、まるで毒にでも犯されたように痺れている。自分は、どうなっているんだろう、このままどうなってしまうんだろう。体内に熱がひろがる。ひろがっていく。それはどうしようもないほど甘くって、

「・・・ハル、」

それまでずっと続いていた律動がようやく止んだ事に、ああこれでやっと眠れるんだと心から安堵した。
名前を呼ぶその人が誰かは結局わからないままだけれど、でも別にいい。誰だっていい。今はそんな事どうでもよくって、ただ眠くて眠くって仕方がないんだ。

だから、おやすみ。
絡みついてくる甘さも、もういらない、もう何もいらないよ。





ゆめかわ文章(?)