頭痛が治まらない。
頭の奥の方に突き刺さるみたいに、ズキンズキンと脈拍に合わせて痛みが走る。それから頭全体を締め付けるような圧迫感。思考に靄がかかり、身体は熱っぽく気だるい。倦怠感、とはこういう状態を言うのだろう。ぼんやりと虚ろに思う。
久しぶりにやばい重症だ。布団の上から動く事もままならず掠れる視界に遠くで警鐘が鳴っている。このまま死んでしまうのかもしれない。短い人生だったけれど、まあ悪くなかった。それに、なんて言ったって死ぬ前に憧れだった白石くんとお話しできたんだから何も悔いはない。…いや嘘、悔いは全然ある。なんだって私は、まだ18年しか生きていないのだから。

「なにキモい顔してんねん、はよ寝ろ言うたやろが」
「ひかる…私まだ死にたくないよぅ…」
「こんなんで死ねたら苦労せんわ、ええから黙って水分補給して寝えや」

そう言ってストローの刺さったペットボトルをずい、と突き出してくる光。相変わらずの毒舌だけどなんて優しいのだろうか、さすが私の弟なだけある。感動から目に涙を浮かべて鼻をすすれば非常に嫌な顔をされた。そんな顔したって嬉しいものは嬉しいのだから仕方ない。
ベッドの横で溜息をつきつつも、私が寝てる間も隣について暇そうに携帯をいじったり、わざわざスポーツドリンクを買ってきてストローまで刺してくれてたり、おかゆを作ってくれたりしてくれているのを私は知っている。光の頭に手を伸ばして短く切り揃えられた黒髪を撫でた。

「…はあ?何してんねん、」
「ありがとう、弟よ」
「やめえ、きしょいわ。ええからはよ寝て」

本気で嫌そうに顔を顰める光につい笑う。
元気になったら美味しい善哉でも買ってあげよう。なんたって、私の弟はこんなに可愛い。