*ネタ提供
205号室(財前、切原、日吉、海堂)


「ええか、この先自分のケツは自分でふけへんのやったらさっさと部屋に戻って布団にくるまって大人しく俺らの帰還を待つことやな。足手まといはいらん」

「そーだそーだ!」

「…そんな大層な話でもないけどな」

「待ってても暇だろ、一緒に行くか」


「いやまって。なんの話?ごめん全く話が見えないんだけど」

現在時刻15時半。
飲み物でも買おうと財布を持って自販機の前まで来たはいいが、自販機がなかなか札を認識してくれず何度も帰ってくるお札と戦っている時。たまたま通りかかった205号室の奴らとばったり出くわし、よく意味がわからないままに今に至るのだが休みの日まで四人一緒かよと若干引いたのは秘密だ。

やけに燃えてる財前の姿に、珍しい事もあるもんだなと思うが、その隣で日吉が呆れたように溜息をつくのに、結局なんなんだよ?と尋ねる。
すると至極言いづらそうに言い淀む日吉。変な奴だなと思うが何やら楽しそうな各々の反応に興味はそそられる。先を急かすようになに?と続け首を傾げると日吉は観念したと言わんばかりに、深い溜息を吐き出して、小さく呟くように言った。

「…肝試しだ」

肝試し。
そう復唱して、呆ける。いや肝試しって。いやいやいや。

「…はあ?今何時だと思ってんだよ。外の明るさ見えないの?お前ら大丈夫か?」

「はあーだめだめ、そんなだから初心者って言われんだよ!明るい!だからいいんだろ!明るい中での肝試しとかやっべーよ、幽霊の姿バッチリ見えちまうだろ!」

肝試しに対して初心者なんて言われた事もないしまずそもそも感想の頭が悪い。しかしそんな事気に留めずに楽しそうに、写真撮れっかな?!とかはしゃいでる切原にお前は楽しそうでいいよなと嘆息する。
それにしたって、いつもならツッコミ役というか馬鹿にする立場のはずの財前が何故かやる気満々なのが一番のホラーだと思う。一体205号室で何があったというのか。

「あまり刺激すべきじゃないと思うが、…仕方ねえ」

「なんだ、海堂はあんま乗り気じゃねーんだな」

「夜だろうと昼間だろうとそういうのは関係ねえだろ。間違って憑いてきたりでもしたら困るからな」

「あー、まあ困るわな確かに。ってかなんで肝試しする事になったの?」

まだ外明るいけど。続けてそういうと海堂は困ったように目線を逸らした。代わりとばかりに日吉が神妙そうな面持ちで話し始める。

「その…見たらしい。謙也先輩が。昼過ぎの森の中で白い服着た女の人を」

謙也先輩。その名前が出てきた事で一気に信憑性が無くなった気がするが、その話は本当だろうか。いや本当にしたって見間違えとか単なる勘違いとかのオチだろうに。まあどうせ財前に至ってはええやん丁度ええブログネタやわとかいう不純な動機なんだろうけれど。

「昼過ぎの幽霊とかレアだし滅多にみれねーよ!なあハルも行こうぜ、昼間なら夜ほど怖くないだろ!」

「あー悪い、俺どうしても幽霊とかダメなんだわ。四人で行ってきてよ」

「せやったっけ、ハル苦手なもんとか特にな……」

「あっ、そうだ部長に呼ばれてたんだった!悪いね、そんじゃ楽しんで!幽霊との5ショット撮れるといいな!」

無理やり話を終わらせてひらひらと手を振ると何か言いたげな顔をする財前も押し黙り、ほないこか。と歩き始めた。
切原がちぇーと残念そうな顔で言うと日吉が先を行くよう促す。財前の後を追うように歩き始めた切原と日吉。そして最後に気乗りしない様子の海堂の後ろ姿を眺めながら、阿呆ばっかだけどそれなりに楽しそうだなとひっそり思う。まあ俺は参加せずに遠巻きに見れればいいや。昼間の肝試しとかする時間あるなら自販機に札を入れる事に時間を費やすわ。
くしゃくしゃでなかなか読み取ってくれないお札をピンと伸ばす。遠くなる四人の後ろ姿を一瞥して、もう一度自販機にお札を入れるのだった。



わちゃわちゃを見守るタイプ