*ネタ提供
ハルは特別何かに秀でているようなやつではなかった。成績も普通、顔も普通、生活態度も普通。平凡という言葉がこれほど似合うやつもそうそういないのではないかと思う。そんなハルが俺の視界に映り込むように…いや、俺が目で追いかけるようになったのはいつからやったっけ。
二年生へと進級したその年、夏が始まり蝉が煩く鳴き出した頃から図書室によく現れるようになったモブが同じ学年のハルと知るまで約1ヶ月。本を読むこともなくクーラーの下で、つまんなそうに頬杖をつきながら校庭をぼんやり眺める姿が印象的やった。
避暑地として図書室を利用するハルは夏が終れば当然のように姿を現さなくなった。
そして夏が終わったと同時に俺の心は燃え上がったのだった。全く意味わからへんやろ、俺も、実の所何が何だかさっぱりなのだから。
全て目線の合わない写真を几帳面に重ならないよう気をつけながら机の上に広げて、どこをみてもハルの姿が広がるその光景に息を飲む。
下校中にイヤホンをして携帯をいじりながら帰る、伏せ目がちなその姿、友人とじゃれあう時のあどけない笑顔や女子と話すとき少し緊張するように強張った表情。全て、全てが俺の心を掴んで離さない。
なんて事はないただの普通の男子高校生のはずなのに、なんで俺は彼に、こんなに惹きつけられてしまうんだろうか。
携帯のフォルダいっぱいに保存されたハルの画像が、ホーム画面に設定されたハルの寝顔が、パソコンのデスクトップの壁紙に設定されたハルの照れた顔が、可愛くて愛しくて苦しくて切なくて、
「…」
フォルダの一番最初の画像を開いて眺める。ぶれているし、俺の手も写ってる。その上ハルは俯いてて、つむじしか見えない。お世辞にも良い写真とは言えないだろう。しかし、俺はこの写真を消せないでいる。
夏が終わって、すぐ。
電車でつり革を掴む俺の前にたまたま座っていたハル。たまたま携帯をいじっていた俺。確か、そんな始まりだった。散々迷った挙句無音カメラのアプリを開いた俺がその時何を考えていたのか、もう覚えていないけれど。
辞めることも、捨てることも出来ない。だって、全部、ぜんぶ、俺の宝物やから。手放す、なんて出来るわけがない。
写真の中の、俺に喋りかけることも、こっちを見ることもない無機質なハルに恋をしているのだから。
盗撮ニスト(ストーカーとも言える)