*ネタ提供


私は今、小さな頃からの夢だったマネージャーの仕事についている。この仕事について今年で3年経つが今でも、朝目が覚めたら今までのすべてが夢の出来事だったなんて事があるかもしれない、なんて事を考えたりする。

仕事は大変だけれど楽しい。

今年から新しく請け負うことになったアイドルグループの子たちは、非常に難しいのだけれど。

「ハルさんハルさん、靴紐切れてしもうたんやけどどないしよ!」
「く、くつひも?!謙也くん、ちょっと見せてください……ああっ、どうしましょう、とりあえず本番まで時間もありませんし結んで応急処置を…でもトップアイドルの足元がそんな応急処置されてたらネットで炎上…?!」
「まあ嘘やねんけど」
「…はい?」
「ははっ、ハルさん慌てすぎやて!おもろいなほんま」

全く悪びれることなく笑うメンバーの一人である謙也くんに言葉を失う。
謙也くんの靴紐はたしかに切れている。しかしポケットからスペアの紐を取り出すあたり、タチが悪いと思う。
何か一言くらい文句を言おうかして、口をつぐむ。私はマネージャー、彼らのサポートをするのが私の役目。多少からかわれたくらいで怒ってたらマネージャーなんて務まらない…けど。

「こら、謙也。ハルさんからかって遊んだらあかんやろ。謝りいや」
「げ、白石…ほんの冗談やん…」
「困らしてどないすんねん。ハルさん、堪忍な…こいつほんま阿呆で」

そう言って無理やり謙也くんの頭を下げさせる白石くんに目を丸めた。そしてすぐに取り繕うように笑う。

「大丈夫ですよ、それより靴紐が無事で良かったです」

心配そうにじっと見つめる白石くんに曖昧に笑ってみせる。謙也くんも少し申し訳なさそうな顔をしているので、この話はもうこれでおしまいでいいだろう。
白石くんにありがとう、と礼を言うと白石くんは少し照れたように笑った。

「失礼します。そろそろ本番です、スタジオの方へ移動お願いします」

「あっはい!皆さん準備は大丈夫ですか?」

扉がノックされ、スタッフの方が顔を覗かせる。
白石くんも謙也くんも準備は終わっていそうだ。あとは、一人。

「財前くん?本番ですよ」
「…ん」

ヘッドホンをつけ携帯をいじるもう一人のメンバーの財前くんの肩を叩く。
すると目だけこっちに向ける財前くん。白石くんたちの視線もあってか移動の時間だと察したのだろう、ヘッドホンを外した財前くんは短く返事をすると、やる気なさげにあくびを漏らした。
謙也くんはペットボトルを煽り、リーダーである白石くんが眠そうな財前くんに喝を入れている。

こんな三人組でも本番ではきっちりアイドルをこなしているのだから、不思議なものである。

準備が整った三人の姿に気合を入れ直して、大きく息を吸いこんだ。

「それではエクスタピアスの皆さん、行ってらっしゃい」

私はトップアイドル、エクスタピアスのマネージャーです。



分岐ルートへつづく
(芸能人のマネージャーになる)