泡沫ヒーロー | ナノ
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泡沫に帰る夢

意識の奥底、泡沫に飲まれていくように沈んでいく。
それは気が遠くなるほどにとても長く、終わることのない夢を見ているようだった。


それは常に、すぐ隣で息を潜めていた。

姿形は人間そのものなのに、人間よりも何十倍も大きな体を持ち、まるで知性のかけらもない獣のような奴ら。
奴らはどこまでも追いかけてくる。唯一安全なのは壁の内側だけなのに、壁の中でも人間同士の見にくい争いは絶えない。

壁の外に奴らがいるから、俺たちは自由を得られない。自由を得るためには、俺たちは壁の外へ行くしかないのだ。


「っあああ、隊長ぉおお!!!」


立ち止まり、立ち尽くす俺の目の前で、奴らに捕まった男が必死に俺へと手を伸ばしている。奴らの手の中にすっぽりと収まった彼は涙を流して、恐怖に顔を染め、死にたくないと叫んだ。


「っあ、」

一瞬だった。
怪物は男の頭をパクリと口に含んで、いとも簡単にそれを食いちぎった。
吹き出し零れ落ちる赤は視界を染める。頭をなくした男の体はまるで壊れた人形のようで、


「っあああああ」


叫び声が、滴る血が、俺に忘れるなと訴えかけてくる。怪物のガラス玉のような瞳に映る自分は、確かに覚えている。恐怖を、怒りを、憎しみを、忘れるはずがないのに。
覚えているはずなのに、それは全て泡沫に消えていくのだった。

END