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笑みを浮かべて、ねえお願い


「ハくんハくん」

「・・・」

「はっ、はっ!」

「・・・」

「シカトとかいくない」

バ、と夏侯覇の目の前に立ちはだかる。苛立たち気に舌を打つ夏侯覇をキイと睨みつければ顔を逸らされてしまった。
そんなに怒ることないじゃない、と今度は眉をハの字に寄せてみれば夏侯覇はこちらを見ようともしなかった。なによ、チラと見るだけでもしなさいよ。
ほんの少しだけ大きい夏侯覇の身長。彼のそっぽを向いた瞳から視線を外してそっと俯いた。

「ごめんってばぁ・・・無視しないでよ」

ぐず、と鼻を鳴らして伺う。
しかし、それでもこちらを見ようともしない夏侯覇に言葉をなくす。
いつもだったらそろそろ口喧嘩が始まって、結局覇クン折れるのに。そんなにまずいことをしてしまったのだろうか、今更ながら顔が青ざめるのを感じながら落ち着きなく視線を漂わせる。

「ご、ごめん・・・なさい、・・・あの、本当に、」
「・・・」
「かこ、っ、ぅ・・・」

目頭が熱い。じんわりと目の前がかすんでくるこの感覚は・・・。


「こっち、向いてよぉ・・・っ、」


頬を伝って落ちていく涙。
からだを引き寄せられて抱きしめられた。
腕の中で嗚咽が漏れる。嗚呼、卑怯者って笑うかな、あなたは。

「かこ、・・・は」

「・・・」

「・・・、ごめ、」

ずるいって怒るかな。
でも。それでも、

嫌われるよりは、これからずっと私に笑いかけてくれないよりは全然ましだな、って。



「俺ばっかりじゃん」

「・・・え?」

「俺ばっかり好きじゃん。お前のこと」

いじけたようにそう言う夏侯覇の顔は見えない。
どんな表情をしているか、なんてちょっと考えればすぐにわかるのだけど。
目に涙を浮かべたまま、ふふ。と笑って夏侯覇の背中に腕を回した。


「好きに決まってるじゃん、ばっかみたい」

馬鹿とはなんだよ。
不満げなため息が頭のすぐ上から聞こえてくるのに、抱きしめる腕に力を込めた。

「大好きー」

「おれもー」

ふふ、と笑う音に幸せを感じた。




(まだ怒ってる?)
(ん)
(・・・勝手にプリン、食べてごめんね、)
(・・・後で買いに行くぞ)
(・・・うん!)

END