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レインコード


「・・・ふー終わったー」

カラン、とシャーペンを机の上に転がして背伸びをした。
レッドは読んでいた本から顔を上げて、そんな私の様子に視線を移す。合った視線に笑ってブイ、と右手にピースを作って見せた。

「お疲れ」

「ありがとー。終わってよかった、これで明日ダイゴ先生に怒られない」

本日飛んできた、担任でもある、地学の先生―ダイゴ先生の鉄拳を思い出して体を震わす。
笑顔で再提出。と一言、私の空欄だらけの宿題を突き返すダイゴ先生。ああ、思い出すだけで恐怖である。
一人じゃ集中できないんだよね、と現在おつきあいさせていただいているレッドに愚痴ったところ僕んちきていいよ。となんでもないよう風に誘っていただいたのはつい3時間ほど前のことだった。
なんの隔たりもなく順調に宿題が終わったところを見るとおわかりだろうが、少しの期待と不安は見事杞憂に終わったわけである。


「・・・あれ、もしかして雨降ってる・・・?」

部屋の窓から見える外の風景に目を丸める。
すっかり暗くなってしまって何もろくに見えやしないけれど、よく耳を澄ませば雨音が聞こえてくるではないか。
みるみるうちに上がりかけていたテンションが下がっていく。時間も時間だしそろそろ帰ろうかと思っていたのに、最悪だ。傘、持ってきてないし。

「ねえ、レっ、」

「傘、貸さない。って言ったら困る?」

いつの間に隣にきていたのだろうか。
思っていたよりも近いところにいたレッドに心臓が跳ね、それからレッドのセリフに数秒の間をおいて変な声をこぼした。

「あ、・・・え、あ、の・・・レッド、さん、?」

「雨降る予定なの知ってたって言ったら、ユウキ怒る?」

真剣な目をして私の頬に手を添えるレッドに顔が熱くなる。
それって、どうゆう意味なのか。近づく唇に慌てる、ああ・・・重なって。

「れ、っど」

「・・・ユウキ、」

好きな女の子家に呼んで、普通でいられる男なんていない。
切羽詰まったように、数センチの距離でそうやって囁くレッドに心臓が口から飛び出してしまいそうなほど、どきどきする。
もう一度、もう一度、と何度も何度も唇を合わせなおす。
外から聞こえていたはずの雨音も、いつしか自分の心臓の音にかき消されてしまっている。何度目かのキスの後に、熱っぽい目をしたレッドは余裕のない顔で少しだけ笑った。


「雨を理由にして、帰らせたくないっていうの・・・ずるい?」

「・・・雨を理由に帰りたくない、なんてずるいかな?」

じゃあ、お互い様だね。
二人で目を合わせあって、笑った。


END