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「もういいかい?」


顔を伏せた君のすぐ隣に腰を下ろして、嫌らしく口角を上げてユウキくんの耳元でそっと囁いた。

「もういいかい?」

驚いたように肩をびくつかせ、顔を上げようとするユウキくんの頭を思いっきり机に押し付ける。少し浮いた位置から押し戻したから額でもぶつけてしまったのだろう。
ガツン、と鈍い音とうめき声が漏れたのを聞いて笑みを溢した。

「まーだ、でしょ?」

キミが答えないから、俺が答えちゃった。
てへ、と効果音が付くらいに茶目っ気たっぷりに言ってやっても机に伏せた(といっても俺が押さえつけているだけ)ユウキくんは反応を示さない。
始めの方は顔を上げようとする力が入っていたはずなのに、今ではすっかり抵抗の力は感じられなかった。なんだ、つまらない。いやでも、それは今に始まったことではなかったんだった。

「もういいかい?」


返事を期待せずにクスクス笑いながら、ユウキくんを押さえつけたまま教室全体を見渡す。興味深そうに俺たちを遠巻きに観察するクラスの人間人間人間。
ざわざわと騒がしい。あー、こんなに騒がしいとそろそろ静ちゃん来ちゃうかな?ただ俺は好きな子にちょっかいをかけているだけなのにね。
邪魔されたらたまったもんじゃない。


「ま、・・・まあだ・・・だよ、」

「!」

押さえつけた方から、くぐもった小さな声が漏れるようにして聞こえてきた。
まさか、まさか返事があるだなんて思ってなかった。驚きに目を丸め、ハハ、と乾いた笑みを漏らす。なんだ、喋れるじゃん。
予想に反した行動に心臓が高鳴る。なんだ、なんだなんだ。すごい面白い。今度は一体どんな反応を見せてくれるんだろう。俺に見せてよ、君の全部!


「もういいかい?」

「・・・もういいよ」

押さえつける腕を外して、ユウキくんが顔を上げるのをジイっと待つ。
昔から彼はのろまだった。いつも動きがとろくっていつもみんなの一歩後ろを走って追いかけていた。
のっそりとした動きで体を起こすユウキくんと目があった。どうしようもないほどの幸福感と高揚感に包まれる。ああ、幸せだ幸せだ。大好きだ。

「・・・いざや?」

「見ぃつけた」

本当は逆なの、わかってるけど言わずにはいられなかった。
驚いたように目を見開くユウキに満面の笑みを隠し切れないまま、抱き着いた。
ずっとずっとずっと、探していた。探していたのは俺の方だった。突然いなくなってしまったたった一人きりの幼馴染。ようやく見つけた。


「久しぶり、ユウキくん」

会いたかったよ。
俺の腕の中で力いっぱい抱きしめているせいで苦しそうに喘ぐユウキくんがどうしようもないほどに愛おしい。


「もう離さない」

大好きだよ。
昔2人でやったかくれんぼを思い出して、一人で笑った。

END