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目も合わない君と、逢いたい私


"好きなの?"

送った文字に既読がつく。
緑が素っ気なく、白が素っ気なく会話を交わす毎日が遠距離の難しさとこの関係に近づく終わりを示しているようで凍えるように冷たい部屋で1人毛布に包まった。
私たちみたいな高校生に遠距離恋愛なんて難しかった。お互いの見えないところで何をしているのかなにを考えてるのか、信じられるのは何もない。彼の言うことも、彼の言葉も、疑心暗鬼が全てを揺さぶり落として行く。
彼はかっこいいから、きっと可愛い女の子は皆寄ってくる。別に下心は無かろうと、親しげに部活の話とか、試験の話とか学校の話とかして笑いあってるんだ。
私には出来ないことを、彼と、彼に近づく女の子はしているの。

全てを規制することなんかできるわけない。
やめてと言ったって、そんなこと毎日を送る上で無理があるし、それ以前に重い女だと思われておわりだ。
だから不安は全て押し殺してきた。
感情を隠してきた。

きっとそんな隠している関係が続いて、いつの間にか愛とか絆とか信用は消え去ってLINEと電話だけが2人を繋げるものになっていたの。

"ごめん、正直わかんなくなってる"

帰ってきた言葉はやはりと言うものだったから。けど、返す言葉なんて考えてなかったからiPhoneの画面を打つ手は止まった。だからしょうがなく、自分らしくもない一言だけ返事をしてしまった。

"そっか"

既読がつく。
指を画面に滑らして文字を打っていく。もうだめだね、私たち。わかれ…

"もう高校3年なんにな。あとすこしで、いつだって会えるようなるのにな"

ぽん、とうかぶ吹き出しに指が止まる。
ずっと2人で話してたことを、思い出す。お互い高校卒業して、蔵ノ介が東京に出てきて一緒に暮らせたらきっと楽しいよねって。
遠距離だった分ずっと一緒だって。

1年前の今は、何をしていたっけ。
1年前の夏は?2年前の冬は?
一緒に毎日を送って、未来描いて。これからだってずっと一緒にだって思ってて、でも気がついたらあなたの心はここにはなくて。
もう、私たち。

"もう、だめなの?"

頬に流れた涙が、私の思いを表しているの。
どうか伝われ。みえて。この、涙があなたに伝わって。だって、私まだあなたが。あなたのことが。

"ごめんな、別れよう"

すきなの。
そう震える手で打った文字が、送信ボタンを押すことなく消えていく。
どんな離れてても消えなかったこの思い。彼の私に抱く恋心だけが溶けて消えてしまったのね。
私はもう一度布団に包まり直して、文字をゆっくりつくっていった。


"わかった。いままでありがと"

冬の寒さが胸と頬に染みてさむい。
いくら布団に包まったって、包まったって、寒いよ。最後くらい抱きしめて欲しいよ。

噛み殺しきれなかった嗚咽が漏れて、返ってこないLINEの画面を黒く染めた。

END