宝石の輝き
「お前さ、本当に盗賊なの?」
「はぁ?失礼なこと聞くなよ」
飴玉を口の中で転がしながら短剣の手入れをするガイアに呆れたようにため息を吐き出す。
懐に隠されたいくつもの砂糖菓子や飴玉のことを思うと頭が痛くなってくる。
イーリス軍の下へついてから、同じ盗賊なんて職種のせいでか何かと接点が多いけれど彼には驚かされてばっかりだ。
きっと目の前に宝石があったとしても、高級菓子があればそっちへ飛びつくだろう。なんて奴だ。
「盗賊としてそれはどうなの?」
「・・・なんだよそれ」
「いやまあ別に仕事はしっかりこなしてるからいいんだとは思うけどさ」
先ほど、しょうがないからお前にこれやる。と言ってもらった飴玉を口の中で転がす。
甘い、マスカットの味が口内で広がっていくのを感じながら、それと同時に先日行われた戦の際に盗んだ宝石を手の中で転がしてみる。小さなダイヤだから売れはしないだろう。ただのガラクタだ。
「・・・ユウキは宝石がいいのか?」
「は?」
「いや、宝石の方が好きなのかなって」
「・・・まあ、菓子よりは」
盗賊だし。
菓子よりは宝石の方が金にはなるだろう。ふうん、と視線を外して言うガイアになんだよ。と見つめてみる。なんか、俺が性格悪いみたいじゃん。
「・・・まあ、そりゃそうか」
そう、なんか吹っ切れたように一人つぶやいたかと思うとガイアは思いっきり立ち上がった。
その様子をぼんやりと眺める。何にやる気だしたんだろう。
「ちょっと行ってくるわ」
「?どこに、・・・って、人の話聞いてけよ」
さっさと天幕を出て行ってしまったガイアに悪態をつく。
何なんだ本当。よくわかんないやつだ。しょうがない、一人ですることもないし寝ようか。
口の中の飴玉もすっかり小さくなったし。
ガリ、と残りの飴をかみ砕いて横になった。
後、目が覚めると目の前に広がるたくさんの宝石に驚かされるのはまた別の話だ。
(・・・アイツからの贈り物なら宝石なんかよりもずっと、菓子の方が嬉しいんだけどな)
苦笑いを溢して、今度は俺が菓子でも送ってやるかと一人巧み笑いをした。
END