西に咆哮せよ
!お下品
窓から差し込む朝の陽ざし
電柱、電線に止まった小鳥たちの囀り声
空調でも効いてるのか暑くも、寒くもない過ごしやすい室温
なんて目覚めの良い朝だ、と久しぶりに朝から感動した。まではよかったのだ。
「・・・」
大き目のダブルベッド、見慣れない室内で俺は目覚めた。
寝息を立てる、全裸の男を横に置きながら。
「え・・・えぇ、・・・」
わけがわからなかった。何より問題なのはこの男は全裸。そして信じがたいことに、自分も全裸。頭を抱えること数十分。思い出してみようと痛む頭を押さえつけた。
目覚めて早々、隣で眠るこの男を見つけてしまい、かれこれ30分くらい身動きが取れないまま、この男は一体どなたで、ここはどこで、一体昨晩何があったのか、そんでこれからどうしようか、そんなことを無言で。隣を見ないようにしながら 考えていた。
結局焦っているのかなんなのか、全く考えはまとまらないのだが。
「ん、・・・」
「!!!!!」
身じろぐ男に心臓が跳ねる。おい起きるな目を覚ますな覚醒するな。
冷や汗を背中にかきながら、とりあえず逃げよう。とそろそろ男から離れる。軋むベッドにやめろ起きるな起きるな。と心の中で必死に念ずるも、その願いは神様に聞き入れてくれることはなかったようだ。
「・・・ん、?ユウキ・・・?」
「おうっふ、」
「今何時・・・ああ、もうこんな時間か・・・」
枕元に置いていた携帯を確認して、だるそうに体を起き上がらせる男にギクリと体をこわばらせた。眠そうにあくびを漏らす男はやはり見覚えはない。ただ目が覚めてわかったことだが、こいつ・・・いけめん、である。
「何?どうかした?」
金色の頭は染めでもしたのだろうか。それにしてはきれいな頭のイケメンはふわりとやさしく微笑むと、おいで。と俺の腕をつかんだ。
おいで・・・だと?なんでもないことのように、ただ俺が近づくことを待つイケメンに焦りと困惑で死にそう。え、なんでこうなってんの?え、てかなんであっち俺の名前知ってんの?
「ユウキ?」
「え、ま・・・っ」
グイ、と腕を引っ張られて体重を崩す。
ベッドからいざ立ち上がろうとしていた体勢だったせいで、うまく重心を移動できなかったみたいだ。ぼふ、と音を立てて顔面からベッドにダイブした。やべ、これ絶対ケツみえて・・・
「あ、ごめ・・・」
「・・・」
「・・・あのさ、ユウキ」
「・・・はい」
「ちょっとムラっとした。だめ?」
布団から顔を上げると笑う金髪男。
え?ムラ?え?何がだめなの?え?え?
ハテナを思いっきり飛ばしながら男の顔を無言で見つめる。否、体が固まってしまって動けないだけだが。
待って、俺なに、昨晩何をしたっていうの?え?
「ほら、そんな顔したら俺もう無理だよ」
「ちょ、ちょっと、待って!」
「んー。待てない、ごめんな」
ムニ、とケツを思いっきし触られてうひゃん、なんて変な声が漏れた。ふざけんなホモ。
金髪ホモをありえないものを見るような目で見つめれば悪びれる様子は全く見れない。
確定。ホモだこの男。
「ばっやめろ触んなホモ!」
「昨日の夜あんなによがってたのによく言うねえ、今日は気分じゃない?」
「よがっ・・・!?き、きき、気分じゃないとか、そうゆう問題じゃなくっ、」
「ユウキのよがってる顔待ち受けにしといたんだ、幸せ舞い降りてきそうだよな」
待ち受けって。一瞬にして思考がストップする。
それから慌てて男の手の中にある携帯を奪って待ち受けに視線を移した。
「・・・」
開いた口がふさがらないとは、このことなのだろう。
がっつりよがってますわ。しかも俺がほられ・・・
「ほら、呼んでよ俺の名前。」
「・・・、」
「誘って?トーマ、お願いって」
トーマ。そう自分の名前を言う男に血の気が引いていく。本当に俺、こいつと・・・。
「い・・・」
「い?」
「いやだあああっ!!!!」
それからの記憶は覚えていない。
とりあえず落ち着いた時には俺も、トーマとかいう男もきちんと服を着てどこか喫茶店にいたみたい。何、俺って興奮かなんかすると記憶なくす性質なのかな。
心なしかチリチリと痛むケツの穴に涙を浮かべながら、頼んだアイスコーヒーに口をつける。
初夏のアイスコーヒーは少し、ほろ苦かった。
END
本当は無理やり襲ったわけだけど記憶なくしてるしいいや、いいように話作っちゃお。とか裏で笑うトーマさん。