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死ぬよりも




深く暗い青が上から覆いかぶさってくるようなそんな錯覚に駆られる。
どんな黒よりも黒で、それは闇という。闇は何も映し出さない。光も何もかもを吸収し、そしてすべてを飲み込んでしまうんだ。
いつの日かきみがポツリと溢した言葉が頭をよぎり口元に笑みを浮かべる。
ああきっとそれは真実以外の何物でもなくて、けれど受け止めるには少し重たすぎる真理で、一人では抱えきれないような重量感にきみはいつの日か参ってしまった。
一人孤独にすべてを抱えていた。そんなの君は今きっと死んでしまいそうなほどに、押し潰されてしまいそうなほどにすべてを孤独に抱え込み人生を送っている。
そして僕は何もせずにただ見ているだけ。傍観するだけの毎日をただ淡々と送る。手出し無用、そう言って笑うきみを僕はニコリともせずにただ見つめていた。


『明るいところ、行きたいなって』

そんな君がいつの日か、ポツリ溢した言葉に僕は初めて動揺を隠しきれなかった。
彼はきっと今逃げ道を探しているのかなって思った。
暗い闇に取り込まれてしまう前に、まだ光が見えているうちに。
懇願するようにこちらを見つめるきみだったけれど、やっぱり僕はなんもしない。できないんじゃなくてしないんだ。

『ダメ、かなあ』

きれいな瞳を暗い色に染めながら言うきみは少しきれいすぎた。
きらきら光る宝石にはなれないけれど、闇を照らす太陽にもなれないけれど、でも。


「琉夏がいるだけで、そこは闇じゃなくなるんだね」

すべてを照らし出すことなんかできない
たくさんの人を魅了するような光を発することなんかできない

でも、誰かに。僕に、小さな小さな光を確かに届けることは確かにできていて。


『でも、自分じゃ光っていることなんか、わからないよ』

俺はいつでもひとり、闇に置き去りにされたままなんだ。
泣くように笑う琉夏がうつる。

それはきっと死ぬよりもつらくて
死ぬよりも寂しいことなんだ。



ボタン一つで終わる世界にさよならを