最後くらい綺麗に死にたいの
「リヴァイ、ねえリヴァイ」
「うるせえ。何度も呼ばなくたって聞こえてる」
なんという物言いだろうか。
いつも通り変わらず乱暴な口調で、だけど優しく私の手を強く握るリヴァイに少し笑った。
「寒いよ」
「温めてやる」
カタカタと震える肩を強く抱きしめてくれる。
「暗くて何も見えない」
「俺はここにいる」
真っ暗闇のなか、頼りになるのはリヴァイの声と体温だけ。
「…リヴァイ、怖いよ」
わたし、死んじゃうのかな。
止まることのない震えに涙をながす。カタカタと病的にからだが震える、いくらリヴァイが強く抱きしめてくれても身体は言うことをきかない。
巨人に食い千切られた片腕が虚無感を晒し、流れ出ていく血は止まることを知らない。
覚悟はしていた。
してた、はずだった。
「…に、たくな、い…」
「…」
死にたくない。
震える声が紡ぐ言葉は、結局どうしようもできないことくらいわかっているのに。
リヴァイはなにも言わずにただ、自分が汚れるのを気にしないで抱きしめてくれる。
ああ…、なんて愛しい存在なの。大好き。
「リヴァイ、愛してる」
もっと生きて、もっとあなたと愛を紡ぎたかった。けれど、もうむりなのね。
涙と血でぐちゃぐちゃの顔で必死に笑顔を作ってみるけれど、それは酷い顔になっていることだろう。
たくさん、もっとたくさん最後を着飾りたかったけれどもう体力も限界みたいだ。
今の自分にできる、思いっきりの力で彼の手を強く握り返してもう一度、大好き。そうつぶやいた。
「わす、れ…ないから、…」
あなたを好きだったこと。
「おねがい」
巨人を、駆逐して。
世界を守って。
それを最後に、意識は海底へ沈むよう静かに落ちて行った。
END