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血漿の流れる音


あなたに、あなたに見せたい愛がある。
あなたに伝えたいこの想い。
届きますように、そっと目を閉じて願いました。


「あ、侑?」

電話口の向こうから聞こえてきた不機嫌そうな声に笑みを浮かべてああ昼寝でもしてたかな、と時計を見上げた。

「久しぶり、ちゃんとご飯食べてる?」

―久しぶりって。一昨日あったばっかだろ。
そう呆れたように言う電話の向こう側にクスクスと笑みを漏らす。
相も変わらずつれないんだから。もう、冷たいなあ。と口を尖がらせてそっとおなかを撫でた。



「うん・・・いや、侑の声がききたくなっただけ」

「え、なに?照れた?照れちゃった?ふふ」

適当にあしらわれる中に、やさしさが見えるから調子にのりたくなる。
それからは他愛もない話をした。ベッドに腰を掛けて、窓から見える夜空に浮かぶ星をぼんやりと眺めながら、電話口の向こうから聞こえてくる私の話を聞いてくれる侑の相槌の声にほっとするんだ。


「・・・あのね、侑。」

なに?となんでもなく尋ねる侑の声に、言葉が詰まる。侑のやさしさがとてもうれしい。侑のやさしさが、いたい。

「ううん、やっぱなんでもない!そろそろ寝るね?」

付き合ってくれてありがと。
キリキリと痛むお腹に手を添えながら笑った。侑は少しの沈黙の後に、特に追求するでもなくああ。と一言返した。

『お腹に子供もいるんだから、暖かくして寝ろよ。おやすみ』

―おやすみ、姉さん。

労わるような、気遣うような侑の声に息をつめた。
声が震えてしまわないように気を付けながら、喉を絞るように声を出す。
ありがとう。おやすみ、侑。
冷たい夜の空気が冷える。冷たくなってしまった手の先は、すでに切れてしまった電話口の向こうを惜しむようにそっと携帯の縁を撫でた。
 
自身のお腹に宿った、赤の他人との間に生まれる命が冷たく、まるで私を内側から冷やしているようだった。
望んでいたのはこんな結末だったのか。そんなはずがあるわけがない。
それでも、選んだのは私で、彼も、侑もこれがきっと一番だと思っていてくれているに違いないのに。


「・・・、っ」

ドックン、ドクンと流れる血液の音と鼓動の音にどうしようもない苛立ちを覚えてしまう。
同じ血が流れる彼のことを思うと、どうしようもなく憎く、そしていとおしい。
愛しているのだ。一生報われることはないと、わかっていることだけれど。どうしようもなく、愛しているのだ。


Thanks[3090〜愛のうた/LGMonkees]
END