星の落ちる音 (BeakHyun) ※現実味の無さでもはやファンタジーの域です
ふと目覚めたら大の字になって寝ていた。
「……なにこれ」
大きなキングサイズほどのベッドにひとりぼっち。手足を動かせばその鎖の音が部屋に響いた。ベッキョンには見覚えのない、豪華な部屋だった。
「うわ、しかも裸じゃん」
加えて何故か服も着ていなかった。生まれたての姿の自分に戸惑い、取り敢えず恥部を隠そうとしてみたのだが、あと少しのところで手が届かなかった。
「何やってるの」
いつの間にかベッドの側にジョンインがいた。部屋の奥の扉から入ってきたらしかったがまるで気がつかなかった。ベッキョンは笑って言った。
「なんか鎖で繋がれてるんだけど、ジョンイナ。これ外してくんない?」
けれどもジョンインは首をひねった。
「どうして?」
「どうしてってお前……、これじゃ仕事行けないだろうが」
「仕事?」
「歌番組の収録今日だったろ。何だお前そんなのも忘れたのか」
「収録? 全く、何のことを言っているのやら」
「……はあ?」
おかしなことを言ってるのはどっちだよ。心の中でベッキョンは毒づいた。が、すぐにジョンインのおかしいまでの煌びやかな服装に気がついた。
「何その格好」
指を差す。ジョンインはまるで王子様のような格好をしていたのだ。金色の髪の毛に、赤いマント、大きな宝石のネックレスや指輪に、てらてらとした青いシャツ、高そうな黒の長いスラックス。
ジョンインが変な顔で笑った。
「……もう。どうしたの今日は。変だよベッキョニ」
くすくすとおかしそうに目を細めたジョンインは、嘘をついているようには見えなかった。
ベッキョンはじゃら、と鎖を掴んで、ジョンインを見上げた。
「なあ、何で俺繋がれてんの」
しばらくの間、彼は答えなかった。が、ふと口の端を緩めたかと思うと「そういうことか」と呟いた。ベッキョンは「どういうことだよ」と思った。
ぎし、とベッドが軋む音。ジョンインが俺に覆いかぶさっていた。
「なななな、なにしてんの……!?」
「ふふ」
「ちょ、ま、……
んんっ!!」
突然唇を塞がれた。そして侵入してくるジョンインの舌。ベッキョンは拒むことが出来ずにそれを許してしまうと何故か、身体が喜ぶように反応を示し始めた。
「んっ、……ふ、……ん!」
まるで魔法にかかったよう。つい寂しさを感じてジョンインの髪へ手を伸ばせば、じゃり、という冷たい鉄が肌に触れた。お互いの唇が離れていく。
変わりに、ジョンインの手が下腹部へと伸びてきた。
「あっ、ん……!」
抵抗するでもなく、嫌悪感を抱くわけでもない自分。むしろ嬌声なんか漏らしてしまって。
唇から、首筋、鎖骨へと下りてきたジョンインのキスが胸の飾りを噛んだ途端、一際高い鳴き声が出た。じくりと下へ集まって行く熱。それをジョンインは、容赦無く上下に扱いた。
「ふ、……ぅん、……あっ、あっ、……はぁ……」
ベッキョンのそれからははしたなく先走りが溢れ出ていた。それを馴染ませるように先を弄られるとおもしろいように太腿がびくびくした。
「今日はやけに感じてるね、ベッキョナ」
「あ、あん……あ、っ」
今日は? ていうことはいつもこんなことをジョンインとしているのか? 俺は。
と、くらくらする頭の中でそんなことを思いながらも、やはり性の快感には抗えず、大きな違和感にすらスルーをしていた。
ジョンインに片方の胸を舐められ、時に甘噛みをされ、そしてもう片方は指で弄れながら、扱かれる。ベッキョンは気がつけばもじもじと膝を擦り合わせていた。
「ん、どうした」
胸元で囁くジョンイン。
「なあ、……はやく」
言わなくても、わかるだろ。直接的な言葉を言うのは流石に恥ずかしくてベッキョンは言葉を濁した。けれどジョンインはそんなベッキョンを一瞥して、愛撫に手を入れる。
「何。どうしたの」
絶対わかってるのに。ベッキョンは悔しさにぐっと歯を噛んだが、相変わらず刺激は止まらない。むずむずと奥が疼いた。
「ジョ、イナァ……、下、……触って?」
「……下?」
「ああっ、……あ、ん、……おしり、おしり……触って……、あああっ!」
するりと蕾の淵をなぞり上げられた。先走りが溢れる。
「触ったよ?」
ジョンインは胸元を舐めながら何食わぬ顔でそう言った。なぞり上げた手は再び、ベッキョンの昂ぶりを扱き始めた。
「ちが、ぁ、う……! ちがう……!」
ベッキョンは首を振って訴えた。そういう意味で言ったんじゃない……!
扱くジョンインの手が緩急をつけてベッキョンをいたぶる。
「どう違うの? ……ほら、言ってみなよ」
熱い息が胸にかかって身体が跳ねた。心臓はさっきからどきどきと脈打っていて、いつの間にか肩で息をしていた。
「あ、……ゆび……っ、おしりに……指、ぃ、いれ……て、掻き回し、てぇ……っ?」
どんどん上がっていく熱。とんでもなく恥ずかしい台詞を言えたのもきっとそのせいだと思った。
「よく出来ました」
頭を撫でられて扱かれた手が離れていくと、自然と次の刺激を待ち構えるように息を飲んでいた。自身の先走りが垂れ流れてかかっている蕾に、ジョンインの指が添えられる。ごくりと唾を飲むと、その指がゆっくりと押し入ってきた。
「あっ、あっ、あっ……!」
ぞわぞわと背筋が震える。
「どう?」
「いい……っ、あっ、……もっ、と……っ」
そういう目的で作られていないその場所は指を一本入れただけでも十分に異物感を感じていたが、それよりもその奥の疼きの方がどうにも耐えられそうになかった。足りない、足りない。指なんかでは到底、足りなかった。
一本、二本、三本……そこまで入った時、俺は食い気味に言った。
「ジョンイナぁ……! 入れてっ……、ジョンイナの、ほしいよ……!」
すると後ろからは指が抜けていった。ジョンインがマントやシャツ、スラックスを脱ぎ捨てた。そうしてお互いに同じ、生まれたままの姿になってもう一度引き寄せられるようにキスを交わした。
「舐めて」
ジョンインの下部を見れば、雄々しいほどにそそり立つそれがあった。恐る恐るとそれに手を伸ばし、顔を近づけると、ぷうんと青臭い匂いがしてきたのだが、それにも興奮した。先の方を舌全体で舐め、そこから下へ舌をおろしてゆく。唇で竿をはみ、裏筋に舌を添えて上下させた。手は根元を扱きながら時折窄まりを細かく舐めてやると、ジョンインに肩を押された。
「……何入れて欲しいんだっけ?」
鼻がついてしまうほど近くにあるジョンインの妖艶な顔。べろりと舌を舐めたジョンインに、息が詰まる。
「あ、……あっ、……ああっ!」
けれど今更ながらでも羞恥心は取り戻されていたようで、口にしてしまうのを躊躇っていると、つるりとしたものが蕾を掠めた。
「ねえ、なぁに」
じくじくと胸に広がる苦しいもの。ジョンインの猛りが、答えを急かすようにして下部をゆっくりと撫でる。心臓が早鐘をうち、そこはぱくぱくと口惜しそうに開閉を繰り返した。ジョンインの熱い視線が絡む。ベッキョンは顔を真っ赤にしながら口を開いた。
「じょ、ジョンイニの、ぉ……おちんちん……っ、ふぁ……、おちんちんをっ、おしりに……っ、入れて、俺を……っ、ぐちゃぐちゃに、してください……っ」
卑猥な言葉。けれど、それを言った自分にすらベッキョンは快感を感じていた。
額に唇の感触がした。褒め言葉はそれだった。
「行くよ……」
「うん、っ」
ジョンインのものがようやく蕾にあてがわれると、歓喜するかのように身体が震えた。ジョンインが腰を動かす。ゆっくりと、身を割くようにしてそのものが入ってきた。
「ん
! ……あっ、……!!」
指とは違う、圧倒的な質量に強く目を閉じた。全て挿入され終わるまでベッキョンは息を止めていたが、唇をついばまれるとゆっくりと目を開いた。
「全部入っちゃったよ、ベッキョナ」
「ん……っ、うご、いて……っ」
そう言うと再度キスをされ、その後ジョンインが挿入をし始めた。それに対応するように腰が動いた。
「あ、は、……ぅ、ん、あっあっ、……ああ」
徐々に増していく律動。膝に手を入れられ、だんだんと身体を折られていくうちにその勢いは上がっていった。
「あああっ! あっ、あっ、ジョン、イナ、ぁ、んん、あんっ、! ああっ、ああ!」
内壁を擦られると、甘い痺れのようなものがそこから広がり、腰が溶けてしまいそうだと思った。でも欲張りな自身の身体は、下部で律動に揺られて先走りを流すそれに伸びていた。
「あれ。ベッキョニってば、変態」
耳元でジョンインが囁いた。
「ごめ、
っ、でも、あっ、ああっ……きもち、ぃ、……きもちいい……っ!」
「
へんたい」
「あああっ……! だめ、言わないでぇ、っ、……だって、ぁ、ふ、……きもちいんだも、んっ……!」
快感の波に、ちかちかと視界で白光が弾ける。ジョンインの恍惚とした表情がたまらなく腰を重くさせて、そそる。
「へえー……そんなに、いいんだ」
「うん、っ……いいよっ、きもちい……ほんと、……だいすきっ、……ジョンイニのことっ、だ、いすき…………!」
まなこからは生理的な涙が零れ出た。ジョンインはそれを舐め取ると、唇を重ねてきた。
「俺も……すっごく好きだよ、……ベッキョニのこと」
その言葉を聞いて、きゅう、と胸がいっぱいになった。すると、ジョンインが眉を顰めて「締めすぎ」と笑った。
「幸せ、……ん、んん……っ」
吐き捨てるようにベッキョンは呟くとすぐにジョンインに唇を奪われた。
絡み合う舌を感じながらも、その時ふと、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
ベッキョニ、
ベッキョニ、
なあベッキョニってば
。
うるさいなあ、今お取り込み中なんですけど。ベッキョンは空気を読まない声に怒りながらジョンインへと手を伸ばしたのだが、その手は何故か空を切ってしまって。
あれ?
ベッキョニ、ベッキョニ、起きろって
。
いや俺は起きてるよ、というか起きてお楽しみの真っ最中で……。
「ベッキョニ?」
聞き慣れた声に目が瞬時に見開いた。はっと気がつけば、ジョンインは消えていた。身体を裂くように押し入っていた大きくて熱いものも、ぬくもりも、側には無かったがその代わりにいたのは、よくよく見慣れた友人。
「…………パク、チャン、ヨル」
心配そうにこちらを除く大型犬の瞳。ベッキョンはだらだらと身体に汗を流していた。
「何してるの……」
ベッキョンは尋ねた。
「変な声……、出すから……、心配で……」
「……ああ、ね」
気まずい雰囲気が漂った。同室の他の人は起きてはいないようだったからそこは良かったが、一番仲の良い奴に自分のあられもない声を聞かれたかと思うと決まりが悪かった。彼方へ吹っ飛んでいた布団を手繰り寄せる。
「ごめん、すまん、おやすみ」
男の、しかも弟のような奴とする夢を見て興奮していた自分。そんな罪悪感からとうとう耐え切れなくなって、口早にチャニョルとのお別れを済ませると、頭まですっぽりと布団を被り、ベッキョンは夢の中の事後処理に追われた。
熱を帯びた、チャニョルの眼差しには気づかずに。