伸ばした手、行方 (BaekHyun)
君の名前が何だろうと、僕の名前が何だろうと、そんなのどうにも関係ない。繋がるたびに思うのは、これが一体何の役に立つのかということ。こんなことをして本当に、何になるのかということを考えて、考えて、終いにはとうとうわからなくなって、どうでもよくなって、僕はまた君と繋がる。
同じことを繰り返し。泣いて喜んで、喜んで泣いて。
こんなことが一体何になるのだろうか。
と、僕の思考を支配するのは決まって同じ問いばかりで。
「ベッキョナ……」
なんて切なげに呼ぶそいつへ、言葉にならない声で返して。そんな風に僕の名前を呼ばないでくれと思うのだけれども、口から出るのは心根とは全くと言っていいほど異なるそれ。
わからない。
僕は彼の前で演技をしてしまう。いい、とか、だめ、とかそんな言葉を巧みに使っては、一つ、二つと芝居を打つ。何故かは知らないけれど、そう、身体が勝手に反応する。
けれどもそれはたぶん、彼が喜んでくれるからだったのかもしれない。
僕は彼の笑顔が好きだった。
「ベッキョナ」
でもどうしてか、その笑顔が僕へ向けられる度に、えも言われない"痛み"を感じた。眩しくて、切なくて、苦しくて。僕にはもったいないくらいの微笑みだからかもしれない。僕なんかに、僕なんかが、僕……なんか
……。
鼻をすすった。気づけば、頬には雫が伝い、吐き出す息はこらえた甲斐もなく震えていた。
「
チャニョラ……、」
断じて嫌いになったわけじゃない、本当に。
好きだった。
僕はちゃんと、好きだった。
ただあの手を握れなかったのは、本当に、好きだったから。君には到底わからないかもしれない。けれどこれだけは嘘ではない。それ故に近づけないことをどうか、わかってほしい。
僕が触れたらそこから僕の汚いものがじわじわと伝わって、彼を穢してしまうんじゃないか、と、心底恐ろしかったのだから。だから、手を払った時は本当に、これでいいんだと思っていた。
彼は美しいのだから、必要ないのだ。僕なんか。
「……っ、」
ああ胸が痛いのは何故だろう。彼が自分以外の人といる場面を見る度に、あの日の僕を後悔するのは、何でだろう。
部屋にはもう、誰もいない。