最後の王 (YoonKi) ※ゲスの極み ※無理矢理展開
「うそだろ……うそだああ……」
罰をまぬがれ騒ぐメンバーをよそに、ユンギはがくりと肩を落とした。ユンギにとって、本日三度目のドクロだった。
どうしてこうも神様は意地悪なのか。つい天に唾を吐きたくなるほどの絶望に項垂れた。
今度はいったいどんな罰ゲームなんだ。これから待ち受ける"試練"とも呼ぶべき未来を想像して、思わず頭を抱えた。
できれば楽なものがいい。本当に、臭いものじゃなければ、それでいい。
ユンギはつい先日のエイを思い出して嗚咽を漏らした。あの日は散々だった。
一人愕然としているユンギをよそに、他のメンバーたちは歓喜に湧く。王であるテヒョンがにこにこと金の箱を取り出した。
罰ゲームの内容が、明かされる。ユンギを含め、その場の者は息を飲んだ。
「さてさてぇー! 今回の、罰ゲームはぁ〜?」
白地に書かれた黒い文字が目に飛び込む。
ユンギは眉を寄せたが、スタッフの説明を聞くなり、みるみるユンギの顔は生気を失っていった。
「なん、だって……」
到底信じられなかった。
「はやくしてよー、ヒョン〜」
ユンギはみんなに囲まれながら、どぎまぎとしていた。
いくら罰ゲームで、いくら番組だからって……。
彼の手には小さな"おもちゃ"握られていた。ゆるい曲線状を描くかわいらしい、薄桃色。
それをまじまじと見つめて、ゴクリとつばを飲むと、ユンギは服の裾をぎゅっと握った。
これで……イク……だって
?
今回の罰ゲームはもはやユンギの理解の範疇を超えていた。考えたのは誰だ、と怒鳴り散らしもしたかった。
だって、普通に考えれば、おかしいと気づくだろうに。
けれども、そんなユンギの予想は多いに外れた。誰一人として、その罰ゲームに疑問の声を唱えるものはいなかったのだ。それこそ、普通だ、というように、表情には一変の曇りもなかった。
スイッチを入れると、手のひらの桃色が細かく震えた。
ありえない。
「ヒョンはやく〜!」
にやにやと歯を見せながら、ホソクが催促した。まるで他人事のようなその態度に腹が立つ。
だいたい、そんな趣味もないのにどうすればいいんだよ、とユンギはホソクを睨んだが、ホソクは笑った。
「ヒョンってばもしかしてしたことないの?」
「はあ?」
ユンギだって、一端の男だ。自慰のひとつやふたつ、もちろんしたことはあった。ただ、このような形のものをしたことがないだけで。
悶々とした表情で顔が曇るユンギに、ジミンはくふふ、と口をおおった。
「ヒョンってば案外ピュアなんだね〜!」
「はあ? だから、ちがうって」
「今どき珍しいことでもないでしょ〜ひゅーひゅー」
「やめろよムカつくなあ」
ジミンのジョークにユンギは至極和やかに(本来の目的を忘れかけていたためか)笑顔で応酬していたが、何か確信めいた名案を思いついたように声を上げたテヒョンによって、その笑顔は引きつった。
「じゃあみんな手伝ってあげないとっ!」
テヒョンがメンバーを指差してそう高らかに言い放った。おいおい。待て、と言ったユンギの声は届かなかった。虚しく、メンバーたちはテヒョンに頷きを返していた。
何頷いてんだよ、と呆れのため息さえ消えるほどだった。こういうときこそ年長者がガツンと言ってくれたなら。ユンギは縋るようにソクジンへと目をやったが、最後の砦のそのひとは人一倍強く頷いては手を叩いていたのだった。
身体中の血がさあっと引いていった。役立たず……、そんな心ない愚痴をこぼしながらユンギは唇を噛み締めた。
「つっても、俺らも男相手なんてどうすればいいのか」
わいわいと騒ぐホソクがふとそれに気がつくと、両手を上げて肩をすくませた。すると他のメンバーたちも、確かに、と困った顔をした。まあ、経験があっても怖いが。
「手順とか教えてくれないんですか?」
ジョングクがスタッフに助けを求めて目をやると、スタッフはこうなることを予想していたかのように、すぐさま何やらの用紙を手渡した。
受け取ったジョングクの手から、子供のようにテヒョンがもぎ取った。ジョングクは別段それに対して表情を変えることはなかった。「なになにー」とテヒョンが大きく目玉を動かした。
ユンギは積極的な姿勢を見せるメンバーたちを複雑な心境で見守ることしかできなくなっていた。
「いち! 相手を、その気にさせましょう!」
テヒョンはきらきらのステッキでメンバーを指しながら、大きな声で告げた。
「その気?」
ホソクは首をかしげた。すると、そういう気分ってことでしょ、とナムジュンが腕を組みながら口を挟んだ。ああ、と納得の表情を浮かべたホソクと代わるようにして、今度はジミンがハイハイと問いを投げかけた。
「具体的に、なにすればいい感じなの?」
左右をきょろきょろと見回しながらジミンはそう言った。なんだか生々しい会話だ。ユンギは顔に、漫画さながら、縦線が入って行くような気持ちだった。皆に囲まれて、"これから自分をどうするか"なんてことを話し合っている異様な談義を聞くのは決して心地よいものではない。まな板の上の鯉っていうのかなあこういうの。ユンギは圧倒的な強引さを感じた。
すると、その時何を思ったのかすっくと立ち上がったソクジンはなにやらとユンギのもとへとにじり寄って行った。それに気がついたユンギが顔を上げると、屈んだソクジンはその顎を掴んでつぶやいた。
「こうでしょ」
そう、彼は言ったかと思うとそのまま、彼は目を閉じてユンギの口を塞いだのだった。突然の柔らかな感触に、ユンギは目を丸くした。声にならない声が脳内で響く。メンバーたちが歓声をあげた。ユンギはすぐにジンを突き飛ばした。
「な、な、なに、なにやってんのヒョン」
突然の出来事に、心臓はばくばくと脈打っていた。胸を抑えて、ソクジンを見るが、彼は至極真面目な顔をしていた。悪意をまるで感じられなかったのが余計に拍車をかけていく。
「なにって、キス」
「そんなの知ってる!」
食い気味に叫んだユンギ。さすがヒョン、とホソクたちは手を鳴らした。感心したように腕を組んだテヒョンは尊敬の目でソクジンを見つめていた。
ユンギはキスをしといて大した反応も示さないソクジンに腹が立ってきたと同時に同性同士の接触における嫌悪感で手が震えた。
するとその時また、ジミンも同じように立ったかと思うと、そのままユンギの側へと寄ってきた。そして、がしり、とユンギの頭を固定するように掴んだ。近づいてくることがわかっていたのにもかかわらず、ユンギはそれによって逃げようにも逃げられなかった。
「ヒョン、俺も」
「ばか、ちょっ
……ん!」
ジミンの唇は舌なめずりでもしたのだろうか、やや湿り気があった。ぐぐぐ、と体に力を入れてはいるものの、ジミンの力には勝てなかった。恐る恐る、つぶった目を開いてみれば、ジミンは熱を帯びたように瞳を閉じていた。
ただ唇を押し当てるだけのキスはすぐに息が苦しくなった。ユンギはどんどんとジミンの胸を叩いた。気づいたジミンはなぜかすんなり離れていった。
ユンギはすぐに口を拭った。男同士でいちゃいちゃとする趣味はない。いくら仲がいいと言えども、ユンギにとっては男からのキスは気持ち悪い以外の何物でもなかった。ぞわりと粟立った肌は収まる気配がしない。ジミンが不満げに顔をしかめた。
「……ダメだなあ」
ぽつり。それはジョングクが呆れ顔でつぶやいたものだった。ジミンは「なに?」と眉を寄せた。
それに対してジョングクが言葉を発することはなく、ただとんとん、とジミンの肩を叩いた。それはまるで交代だと言わんばかりのものだったので、ジミンはしぶしぶといった感じでずるずると体を引いていった。笑顔を浮かべるジョングクは、そして、ユンギの側へ座ると、今だ違和感のする口元を拭っていたユンギの腕を掴んだ。
ユンギはすぐに怪訝な表情を浮かべたが、しかしそんなユンギに、万能マンネことジョングクはとろけるような、恍惚とした笑みを見せたのだった。
「ヒョン……」
「……な、んだよ」
「ヒョン……」
ジョングクがユンギの唇を親指で、すっ、となぞった。たまらず、ひぃっ、とユンギはぎこちなく後ずさりをする。
けれどもジョングクは後退するユンギに臆することなく彼の手に指を絡ませたかと思うと、もう一方は腰へと回した。
視界にジョングクの顔がクローズアップされる。
大きな瞳だ。ユンギはその目に吸い込まれるように見入ってしまった。その時視線が、かちり、と合う音がした。
ジョングクがふっと微笑む。ユンギは心臓がどくりと跳ねるのを感じた。
ちゅ。
それは、軽いキスだった。ユンギはそれでも力強く目をつぶっていた。唇を固く食いしばって閉ざすユンギからすぐに唇を離したジョングクはけれど、またゆっくりと近づいてきてはユンギに怖がらないでとでも言うように、ちゅ、ちゅ、と唇を優しくついばんでいったのだった。
角度を変えては唇を重ね、けれどもそっと離れていく。
そこに先ほどまでの強引さはなく、先ほどの嫌悪感もまた、なかった。まるで魔法にかけられたかのようだった。キスの合間に、するりと頬を撫でられたり、髪をいじられれば、固く食いしばっていたユンギの唇もみるみるほどかれるようにしてゆるく開いた。ユンギはジョングクに、されるがままだった。
その情特有の甘美な光景に、その場の人間は息を飲むしかなかった。
ユンギは眉を寄せた。
「っ、ジョン、グク………っ」
フレンチキスを繰り返すジョングクに、ユンギは自分自身だんだんと気持ちが高ぶっていくのを感じていた。気がつけば、呼吸さえも浅くなっていた。
にやりとジョングクが笑う。
「まだまだですよ」
「
!」
ちゅ、と唇が触れた。次の瞬間、ジョングクの舌が、ユンギの口内へ押し入ってきた。
はっと見開いた視界には、余裕たっぷりに笑うジョングクがいた。
「は、ん、……ん、んんん!」
ざらりとした舌の感触。ねっとり、唾液が絡み合っていく。
口を閉じてしまえばいい。
その舌を歯で噛んでしまえばいい。
確かにそう思った。けれども、どうしてか、ユンギは拒めずにいた。
ジョングクの舌が口腔を掻き回す。ユンギからは熱い吐息が漏れた。
「ん、……ふ、……ぁ」
誰かが唾を飲む音がした。
頭が、ぼうっとする。四肢の力が入らない。眉間に寄っていたしわが少しずつほぐれていった。
ジョングクが向きを変えて、さらに舌を絡ませた。
ぞわり、とユンギの背筋に何かが走った。
「
っ、……ん、っ……はぁ、っ」
「…………」
じんじんと身体の温度が上がっていく。ユンギは自身から漏れる息が、さっきよりも熱を帯びたものになっている気がした。
「すげー、ジョングギ……」
テヒョンがほう、と声を出した。
「さすが最強マンネだ……」
食い入るように見つめるホソクは、ごくりと唾を飲んだ。
ユンギが大きく息を漏らす。自分が熱を上げている様をまじまじと見られているかと思うと、たまらなかったのだった。
ジョングクはやがて、すう、と唇を離した。ユンギの唇が、唾液でてらてらと光っていた。
「
その気になったでしょ。テヒョ二ヒョン、次」
今だに余韻にとらわれているユンギをよそに、ジョングクはあっさりとそう言って笑った。けれどもテヒョンは見入っていたのか、しばらくしてからはっと慌てて用紙に視線を落とした。
「あ、え、えぇっと、あ、服を脱がせて、性器を刺激、してあげましょう」
「……ほー」
斜め上を見上げたまま、ナムジュンがつぶやいた。
「……」
せいきを、しげき?
ユンギの真白く染まった脳内で、その言葉はぽかりと浮かんできたが、結局ぼやぼやとした頭ではその意味を考えられずにそのうち消えていった。そしてふと、確かめるようにしてユンギは唇をなぞった。またぞわり、と背中が震えた。
「んー、……それで? そのあとは」
ジンはそれでも動じない様子でさらに続きを催促した。テヒョンは大きな目をきょろきょろと動かした。
「それで、それで、えっと、……お尻の穴? を? 解してあげま、しょう」
はてなをたくさん浮かべながら、テヒョンが用紙から顔をあげた。その場にいたメンバーたちはややそれに吟味するような表情を浮かべた。けれどもユンギは相変わらず、曖昧に唇を噛んで押し黙っていた。
すると、意を決したようにジミンが立ち上がった。
「ようし」
それはさながら、リベンジのようにも見えた。そろりと手を伸ばしたジミンが触れたのは、ユンギのチャックだった。
それを下ろされていく感触にユンギはようやく正気を取り戻して、反応した身体は急にびくりと跳ねた。ユンギがはっとジミンを見る。
「お前……な、に」
ジミンがこれから何をしようとするのか、薄々ながらわかり始めたユンギだったが、けれどもそんなものを素直に信じたくはなかった。ユンギは抵抗の証としてジミンの手を掴んだのだが、その掴む手はわずかに震えていた。弱々しいそれは、まるで力などなかった。
そのユンギの怯える姿を、まるで幼子を見るかのように微笑んだジミンは、そして承諾をえないままずるずるとズボンをずらしていった。ユンギは抵抗を見せたもののどうしようもできず、止めることはできなかった。
そこに、ユンギの白くつやりとした肌が露われた。外気の空気に晒されて震えた四肢に、ユンギは恥ずかしくなって咄嗟に足を閉じた。
だがユンギのそれがゆるく立ち上がっていることをジョングクは見逃さなかった。
「ヒョンってば、俺ので感じちゃったわけ?」
ふっと笑ったジョングクに、ユンギはかああっと顔が熱くなった。
恥ずかしい。
返す言葉もなく、うつむいた。するとそのとき、ユンギの身体はびくりと跳ねた。
「!!」
見れば、ユンギの下腹部へ伸びる手がそこにあった。ジミンだった。その手がユンギのものをゆっくりと撫であげる。再び、びくりと身体が震えた。
「っ、!」
ユンギは咄嗟にジミンの手をはたいた。叩かれたジミンの手は少し赤くなった。
「ヒョン、」
「なにすんだ……!」
「なにって……ナニ?」
「ふざけんなっ」
収まったはずの鳥肌が再度ぞわぞわと全身に立った。けれどもジミンの手は再び伸びてきて、ユンギはなんとか拒もうとしたのだが、それを見兼ねたメンバーたちは暴れようとするユンギの身体を抑えた。
「はっ、なせ! こら、おい!」
「ヒョン、がんばって!」
「離せ、テヒョナ、」
「ユンギヒョンがんばって」
「ナムジュンまで、この」
さすがに男六人に抑えられると、ユンギも腕を動かすことすらできなかった。
「っ……」
そろりと伸びた手が、やや萎えかけていたそれに触れる。柔く、優しく、撫でるようにして繰り返しそれを刺激する。ユンギは息を飲んだ。たちまち、ユンギのそれは熱くなり始めた。
下半身がむずむずと疼く。一人でするよりもジミンの手には力がなくて、到底達するのには遠いはずなのに、普通より何倍も気恥ずかしさや背徳感を感じるせいか、知らず知らずのうちに息が乱れ始めていた。自分で触るのとはまるで違う、誰かに触られるということはなんだか不思議な感覚だった。
先ほどとは異なる反応を示し出したユンギを見て、ジミンには安堵の表情が浮かんだ。そしてジミンは手でゆるく小さな輪を作ると、それをゆっくりと上下させた。
「ん、っ、……は、っ」
びくり、とユンギの肩が揺れた。それに応対するように、ジミンの手には力がこもった。そして、ジミンは一定の速さで扱いていく。中心をこすられる度にびりびりとした淡い快感が走って、びくびく太ももが痙攣した。
「気持ちいい?」
まさか、こすられただけでこんなに身体が反応するなんて。
「ヒョン感じてる?」
「あ、……っちが……う」
「説得力ないよユンギヒョン、声なんか出して」
ジョングクの言葉にユンギは身体中がぼあっと熱が上がって、まるで女のように声を漏らす自身の口を塞いだ。けれども、ジョングクがそんな指摘をするものだから、ユンギは余計にジミンの動きに敏感になり始めた。
じゅくじゅくと溢れ出す先走りは、既にジミンの指さえも、てらてらといやらしく濡らしている。
「わあ、すげえ」
ユンギの肩越しに様子を見ていたテヒョンがその光景に感嘆の声をもらした。目をくりくりとさせて食い入る様は、さながら子供のようで、この場にはあまり似つかわしくないとユンギは思った。
「み、みるな……よ」
「なんで?」
「なっ……で、って……んっ」
「すっごい気持ち良さそうにしてるじゃない、ヒョン」
「ばかか……っ、」
そんなことを言うのならお前が変わりにやってくれよ、とユンギは唇を噛んだ。
人前で腹筋を見せることでさえ恥ずかしさを感じるというのに。それなのに、自分はいまこれほど大人数の前で、恥部を、痴態を晒している、あまつさえ、声まであげて。
ぐり、と先端をいじられてユンギの喉の奥からは嬌声が出た。勝手に出てきたんだという言い訳にただ微笑みを見せただけのジミンが、ユンギにはいかにも憎たらしくって、すぐに眉根を寄せた。
すると突然、何を思ったかテヒョンが胸元にあるユンギのそれに手を伸ばし、つまんだ。
「ぁっ、
!」
テヒョンはにんまりと笑った。信じられない、というような表情でユンギは彼を見たが、同時に、触られたそこからはじんじんとした甘い痺れが広がった。
「きもちい?」
「んなわけ、」
「えい」
「
ん、ぁ、!」
テヒョンの手を掴みかかったユンギの手は、しかし、胸元をいじられた途端すぐに弱くなった。それを見て、けらけらとテヒョンがからかいにも似た声を上げた。
「……なんか、いじめてるみたいだね」
ソクジンがぽつりと言った。ソクジンはユンギを取り囲むメンバーたちの少し後ろにいたが、その発言によって彼にはメンバーたちの視線が集まった。相変わらず、ソクジンの表情は変わらなかった。
「だけど……」
ホソクは言いかけたが、ユンギを見るとすぐに「まあ、そうだね」と笑った。
「となると、なんか、俺たち変態みたいだね」
ナムジュンが他人事のように言うのを受け、ジミンは自身の手元をちらりと見た後「やめてよ」と鼻を鳴らした。彼の手は今だに上下運動を続けており、それに合わせてユンギの身体も揺れている。
ユンギは耳を塞ぎたかったが、まだ手を抑えられたままだったのでそうは出来ず、少しきまりの悪い気持ちになった。
「でも興奮しない?」
「こうふん?」
疑問符を浮かべたテヒョンにジョングクが頷いた。うっ、とナムジュンは顔をしかめた。
「いよいよ変態だぞ、それ」
「なんでよ」
「なんでって……」
「俺すごいきますよ、あはは。才能あるのかも」
「……」
ふっ、と爽やかに微笑むジョングク。それにユンギは恐怖さえ覚えたが、その会話に、ぽかりと口を開けているのはテヒョンだけだった。ナムジュンがもやもやとした表情を浮かべて、やがてため息をついた。
けれども、ユンギはそれらを聞いていてだんだんといらいらとしてきた。気恥ずかしさやら気持ち悪さやらがくすぶって、どうでもいいからはやく終わりたい、という気持ちばかりになっていた。
「はやく……」
「ん?」
だからか、つい、ぽろりとユンギは言葉をこぼした。けれどもそう自分から言ったにもかかわらず、ユンギは途端にそれを後悔した。まるでもっとしてほしい、とでも言っているように自分でもとれたからだった。
「あ、いや……」
ユンギの顔がぼうっと赤くなった。ジミンの視線を避けるようにして、ユンギはうつむいた。
「じゃあもう次行こうか」
ふっと笑ったジミンは、ちらりとユンギに目配せしながらその手を止めた。当然、快感の波は止んだのだが、ユンギはなんだかもじもじとしてしまった。そしてなんとはなしにちらりとどこかへ目をやれば、不思議とホソクにそれは合った。
ユンギの手にあったローターは、いつの間にかホソクの手の中にあった。薄桃色の、ローターだ。
ホソクはそれのスイッチを入れたり切ったりしていた。
ああ、そうだった。あれでイかないといけないのか……。ユンギはどんよりとした気持ちになってため息をついた。
ゲームだから仕方ない、というのもあったが、しかし、ユンギはだんだんとそれに興味すら湧いていた。あれを使えば、いったい、どんな……。
「……」
「あ、ヒョン。指、入れるよ?」
「へ?
っ!」
突然、臀部に走る得体の知れない痛み。ユンギは苦しくて顔を歪めた。その表情を見たジミンが慌てて指を抜いた。
「あああ、ごめん! ヒョン痛かった?」
ユンギが声も無く頷く。それは快感とは程遠いようなものだった。ジミンはうーんと唸り声を絞り出したが、するとジョングクが「ちょっとやらせて下さい」と名乗り出てきた。
ジミンは先ほどのこともあってかするすると脇により、ジョングクはユンギの開かれた脚の間に座った。
ユンギの心がざわざわと波立つ。何をされるのかと、不安になったのだ。おい、と声をかけてみたユンギだったがジョングクは「まあまあ」と笑うばかりだった。
再度、四肢に例の違和感を感じた。ジョングクが指を入れたのだ。ユンギは、ぐ、と喉に力が入った。けれどもそれはすぐに出て行ったかと思えば今度はひやりとした感覚。
「な、! なに」
「ああ、ローションです」
ジョングクがユンギの脚の間から、似つかわしくない爽やかな笑顔を浮かべた。見れば、ソクジンがその容器を手に持って揺らしていた。
うげ、とユンギは口角が下がった。こいつと出会うのがこんな形で、しかもそれが使われるほうだなんて、と思ったのだった。
ローションのおかげで滑りがよくなったユンギの"下の方"で、ジョングクが念入りにその周囲を撫で回し始めた。何分初めてのことなのでやはり恐る恐るのようではあるのだが、ついにはジョングクはその指をそこへ押し入れていった。奇妙な気持ちが沸き起こる。
「う……」
「……どんな感じですか?」
「きもち、わるい」
「えー、」
ローションによってさっきよりもすんなりと入った指だったが、それでも異物感は拭えていなかった。
こんなんで達することができるのか、とユンギは疑わしさにむかむかとしてきた。
すると、側にいたホソクやソクジンが何やら手を伸ばした。ユンギに対して笑みを浮かべながらも、それぞれ、やんわりとユンギの下部や胸元を弄り出す。
「ちょっ、」
萎えかけていたユンギのそれはホソクの手によって再び立ち上がり始めた。震えるユンギの身体。胸元を弄るソクジンは当初とてもぎこちなかったのだが、その動きは徐々に確かなものになっていって、時折きゅ、と彼が摘めば、ユンギはびくりと反応してしまうようになった。
ジョングクが感嘆の声を漏らした。
「おおユンギヒョンのここ、俺の指の付け根んとこまで咥え込んだ……」
それは吐息混じりの、興奮じみた声だった。だんだんと、挿入を繰り返されるたびにそこがじんじんと疼くようになって、それがユンギには快感になってきたのだった。しかし、ユンギは首を振った。自分が自分のようではないみたいで、どうにも否定したかったのだ。
けれども身体は言うことを聞かずに、いや、とても正直に、反応を示してしまう。
「あ、……あっ、……あ!」
「くねくねしてるねヒョン」
「う、るさ……、ぁ!」
体育座りをしながら、テヒョンがユンギの顔を覗いていた。笑顔の彼が言う言葉はユンギには更に羞恥心を煽るものだった。そのせいでより、感覚をリアルにした。
テヒョンがもじもじと膝を擦りあわせてしきりに目を動かした。それは何か言いたげといわんばかりの素振りに見えたので、ユンギは勝手に喘ぐ喉を抑えながら、何だ、と言うと、テヒョンはようやく口を開いた。
「あの、ヒョン……」
「ん……っ、?」
「あの……ね、ちゅー……」
その言葉と同時に、いきなりテヒョンが身を乗り出したかと思えば、彼は唇へとキスを落としてきた。つるりとした唇の感触に自然と声が漏れたユンギにテヒョンが眉を寄せる。
「ね、ヒョン、僕の」
そう切れ切れに言ったテヒョンは、すぐにユンギの手を取るとそれを自身の下部に導いた。そこは、衣服の上からでもそれの形がはっきりわかるほどに猛っていた。ユンギは驚きに目を丸くしたが、手を引こうとしても更にぐっと押さえつけられた。テヒョンが、は、と小さく息を漏らした。
「て、テヒョナ……ぁっ?」
ユンギは困惑した。どうして、なぜ。なぜ、どうして。と皆目見当もつかなかった。テヒョンが手を動かす。ユンギの手が、まるでテヒョンのそれを愛撫しているような光景だった。
テヒョンがまた嘆息をついて目を閉じた。その様子に何故かユンギは心がいっぱいになるのを感じたちょうどその時、背筋にぴん、とした感覚が走った。
身体が弓なりに反る。ユンギの心臓がどくどくと脈打った。
「へえ。ユンギヒョン、ここ好きなんだ」
これ見よがし、とばかりにジョングクが白い歯見せた。ユンギはすぐに理解して、更に身体が熱くなった。
すると、ジョングクがホソクやソクジンに向かって「ヒョンたちも頑張ったくださいよ」とけしかけた。ホソクが唇を歪めた。が、ぺろりとそこを舐めると、「ようし」と言って手で弄るばかりだったユンギのそれを口に含んだ。
「っ!! は、はあぁ……んっ!」
ねっとりと熱いホソクの口内を、ユンギは鋭敏に感じ取った。たまらずに大きく、深い息が出る。首を捻って顔を背けてみたが、次にソクジンがべろりと胸の飾りを舐めた途端、それは小刻みに振れた。だが重ねるように、ジョングクは先の場所を狙うように指を動かした。
「あっ、……あ、ん、……や、……く」
ぴちゃぴちゃ、じゅくじゅく。様々な卑猥な音がユンギの耳腔も犯していく。ユンギの呼吸は荒くなり、肩は不規則に、しかし、大きく上下した。
するとテヒョンが再度ユンギの頬に手を添えた。近づいてくる彼の顔に、ユンギはまたキスをされるのだとわかったがそれを止めなかった。
「んっ……ん、ふ……はあ、……ん、んんっ……」
次第に、テヒョンの身体は前のめりになっていき、ユンギの唇の隙間から荒々しく舌を挿入した。
絡まる舌。テヒョンの舌はざらりとして熱かったが、唾液のせいでぬめぬめとしたものに変わった。
ユンギはぐ、と腰の辺りが重くなるのを感じた。ジミンが苦しげにうめき声をあげた。
なかなか入れようとしないユンギに業を煮やしたのか、ホソクはユンギからローターを奪い取ると、そのよくほぐされた窄まりへと当てがった。ユンギが息を飲んだ。
「いやだ……! やだ……! ま、まって、ホソガ!」
「さっさと終わらせないと収録が長引いちゃいます! いきますよ」
「あっ! あっ……! ……や、やめっ……
ッあ!」