『もう少しだけ、』



竹谷くんに助けだされたらしい僕は学園の保健室に寝かされていた。
どうやら出血の量が酷かったらしく、つい先程まで生死の境をさ迷っていたらしい。人より丈夫に出来ているこの身体のお陰で命拾いしたのだろう。



また、竹谷くんに助けられちゃったなあ…。



彼は僕が本当に危ないときにいつも助けてくれる。ほうっておけばいいのに。

そして、僕も、


竹谷くんが来てくれると、話していると、笑いかけてくれるともう少しだけ生きていたくなる。……なんで?







「右京さんよがっだあああ!!」


「僕、こんなスリルもう嫌ですよ!!」


「数馬は新野先生を、左近は彼を呼んできて」


「はい!」


「わかりました!」




三反田くんと川西くんが医務室から出て行くと善法寺伊作くんは「まだ動いちゃだめだよ」といい、道具を準備しはじめた。
泣きじゃくる乱太郎くんと伏木蔵くんに手を伸ばすと二人に掴まれ、より一層泣かせてしまった。



おかしいんだ、

彼らを見ていると生きていてよかったと思ってしまう。
















「いいですか卯月さん、傷は驚くぐらい早く治ってきていますが、あなたはたくさんの血を流したんです。絶対安静ですよ。それから保健委員の子達に交替で貴方を見張ってもらうように言いました。決して逃げてはだめですよ?」


「はあ、僕なんかにそこまでしなくても…」


「卯月さんはもっと自分のお身体を大事にして下さい。貴方のご実家の事情がどうであろうが私達にとっては救わなければならない患者さんなんです。それに、ここには貴方にいなくなって欲しい人間はいないんですから」


「………、」


「じゃあ、善法寺くん後を頼みましたよ」


「はい」





新野先生は私はこれで失礼しますと言って医務室を出て行った。僕はというと、さっき新野先生に言われた言葉が頭から離れず、善法寺くんに声をかけられるまでずっと考えていた。



「右京ちゃん?」


「あっ、なに?」


「ぼうとしていたから…具合が悪いのかと思って」


「ううん、なんでもないよ」


「右京!」




突然開かれた襖の前にいたのは竹谷くんだった。
竹谷くんは医務室の襖をピッタリとしめ、無言で近寄ってくる。
その姿が寝ている間に見ていたあの黒塗りの姿に見えて、無意識に僕の身体が震える。










「…………、」

「お前にはこの世界に受け入れれない」





















「右京」

「いいじゃないか、こちらに来てしまえば」

































「さあ、こちらにおいで!」




「ごめんな、お前の事守ってやれなくて、」






















「えっ、……」

























「生きててくれてありがとうな」






抱きしめられ頭を撫でるそ竹谷くんの手がとても優しく、温かくてさっきまで頭の中を占領していた自分が自分でなくなるような恐怖が薄れていった。



いつの間にか、僕の頬には涙が伝っていた。





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