『いき、てる……』




右京が先輩達に連れていかれ、学園側としては行方不明になってから五日が経った日の事だ。
どこかの城が所有していて時と共に忘れ去られてしまったであろう場所にその地下牢はあった。
もしやと思い、急いで地下に下りる。
階段を降りる事に強くなっていく血の臭いに比例して心拍数が上がっていく。


光を取り入れるだけの小さな窓しかないその部屋は奥にいく程暗くなり、自分が持つ松明だけが唯一の明かりだった。

よく目を凝らし、注意深く足を運ぶ。

ぴちゃり、と水溜まりに足を入れた様な音に松明を近づけるとそれは赤黒い液体で、それが血液だと理解するより早くに身体は動き出していた。



「右京!!」



急いで近づき名前を呼ぶが、ぐったりとしていて全く動く気配がなく嫌な汗が背中を伝う。
震える手に叱咤し、左胸に耳を当て、心音を確認する



「いき、てる……!!」



刺されてからまだそんなに時間が経っていないらしく、心臓の音がしっかりと聞こえ安堵する。
素早く止血し、手足の縄を解いてやり落ちないようしっかりと背負う。





「善法寺先輩!右京を、右京を助けて下さい!!」





どうやって学園に帰ってきたかは覚えていない。
木々を掻き分けながら、衣越しに感じる血の生温さに、段々と荒くなる呼吸に、ただただ恐怖ばかりが募り、気がつけば学園の保健室の襖を開け叫んでいた。





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