「馬鹿じゃん」
 デリックがあざ笑うように顔を歪めて言ったから、その通りだなと返事をしてみる。デリックはその返事が気に食わなかったのか、顔をもっと歪めさせた。まるで手でくしゃくしゃにした紙のようだ。
「俺は、臨也よりお前の方が嫌いだね」
「俺はそんなに嫌いじゃねえ」
 嫌われるのは慣れてるしな、俺は心臓がちくちくと針で突かれているような痛みを堪えるように瞳を閉じる。デリックは少し勘違いをしたようだ、静かに俺のところから去った。
「デリック、かわいそうだ」
 何所からともなく津軽が言った。瞳を開けると、少しはなれた所に津軽がおり、今にも泣きそうな顔をしていた。
「あいつが悪いんだよ」
「…ううん、デリックも、静雄も悪くない。俺が、悪いんだ」
「なんで津軽が…」
「ごめんね、俺がいなければよかったのに。そうすれば、静雄もデリックも苦しまずにすんだよね」
 津軽は涙を流しつつ俺の横を通って何処かへ行った。きっと臨也のところだろう。臨也に聞けば、何か解決策でも見つかるのだろうか。いや、それはないだろう。
 一人ぼっちになってしまった部屋は、とても静かで落ち着かない。早く、帰ってこねえかな。

20101205
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