「シズちゃんが最近見かけないんだけど、何か知ってる?」
問いかけた臨也さんは心底心配しているようで、俺の知っている臨也さんじゃなくて。咄嗟に嘘をついた。「俺も見かけてませんし、噂も聞いてません」
なるべく顔を合わせないように言ってみれば、臨也さんは少しだけ笑った。嘘をついているのを知っているのか、それともただのハッタリなのか、平和島さんを心配しているのかはわからないけど、すごく胸が痛い。
「そ、そもそもっ!臨也さんの情報網があれば、平和島さんが今どうしているか、ってわかるじゃないですか」
目を逸らしたまま言ってみるけど、臨也さんは返事をしない。恐る恐る振り返ってみると、臨也さんは笑ったままだった。
「そりゃ、俺にわかんないことはないよ。紀田くんの昨日の晩ご飯だってわかる。だけどね、何かにバリアーされているように、シズちゃんのことは判らなくなってしまった」
「だからって、俺を使わなくても…」
「紀田くんは、今、シズちゃんを持ってるじゃないか」
身体が硬直した。
「…平和島さんの情報、わかってるんじゃないですか」
俺は笑った。面白いからじゃない、恐怖を覚えてるからだ。臨也さんは怪しく笑ったまま、返して、と言う。俺はやだと返して、にらみ合っている。負けるのは確かだけど、それでも抵抗するしかない。
「絶対渡しません、臨也さんだけには」
「返してよ!シズちゃん人形!あれ最後の一個だったんだよ!」
「俺だってほしかったんですよ!それに、俺が元々予約してた人形だったのに、アンタが脅して…そのせいで俺は平和島さん人形手に入れられなかったんですからあ!」

20101128
後悔はしてない。

 
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