「見てみてシズちゃん!じゃーん!」

ある日の池袋、普通に歩いて居たら綺麗な声に呼び止められ振り向くと、声の主は私に似ている子どもを抱えていた。
その子は金髪で、着物を着ていて、私より遥かに可愛い。

「その子、どうしたんだ?」

「私が作ったの!まあシズちゃんと違って男の子なんだけどね!」

えへへ、と笑う甘楽を見て呆れてしまった。前々から何だかよくわからないことをしているなと思っていたが、まさか人間を作っていたとは…

「ちょ、違うよ!この子はロボットだよ、人間を作っていたわけじゃないからね!」

甘楽の腕の中にいるロボット――何度見ても人間の子どもにしか見えない――が、私をじっと見つめてきた。青い瞳はビー玉のように美しく透き通っている。

「津軽、この人はシズちゃん。私の彼女で、津軽の将来のお母さんだよ。」

「ちょっ…妙なことを吹き込むなよっ!」

「しず、ちゃん?…しってる。へいわじましずお、おりはらかんらのおよめさん、ぼくのおかあさん。」

「…!」

津軽という名前のロボットは、私と甘楽を交互に見ながら嬉しそうな表情をしてそう言った。何だ、この感情。ただのロボットなのに、護りたくなるというか、可愛いというか…

「まだ言語能力は乏しいんだけど、もう少し調整したらスラスラと話せるようになると思うんだ。…ねぇシズちゃん、そろそろ私と一緒に暮らさない?付き合って五年目だし…津軽もきっと喜ぶから。」

津軽も喜ぶ、なんてずるい。そんなの断りたくても断れない。まあ、私の答えは一つだったんだけど。

「…幸せに、してね?」

「もちろん、たくさん幸せにしてあげる…幸せ過ぎて死んじゃうくらいに。」

誓いのキスは、公共の場で。





「あーっ!カラが入っちゃったぁ…。」

甘楽からプロポーズを受けてから二ヶ月後、津軽は前よりスラスラと話せるようになったし、たくさんのことを覚えた。今は私と一緒に料理を作って料理の手順を一生懸命覚えている。

「でも最初の頃より上手く割れるようになったな。練習すれば上手くなるだろ?」

「うん!僕、もうちょっと練習するー!」

しずおの料理の負担を軽減してあげたいの!とにこやかに言う津軽は本当にいい子だな、可愛いし。まだ小学生くらいの見掛けなのに親孝行者だ。

「今日の夕飯は何ー?」

「甘楽。」

仕事を終えたらしい、甘楽が私の腰に腕をまわして抱きついてきた。それから津軽に気付いたらしく、偉いねと頭を撫でてあげている。

「今日は天ぷらにしようと思って。今日じゃがいもが安くてたくさん買っちゃったから…」

「天ぷら大好き!」

「僕も僕も!」

「というかシズちゃんの料理が好き!シズちゃんが好き!」

「僕も、しずお好き!かんらも好きー!」

ふわふわと綿菓子のように甘く可愛く微笑む津軽を見て、甘楽とほぼ同時に津軽を抱き締めた。何この子本当に可愛い!

「私も津軽大好きだぞ!もちろん、甘楽もな。」

「二人ともらあぁぁぶ!」

甘楽が、私を津軽ごと抱き締めてきた。苦しいけど嬉しい。

「くるしいよぅ…!」

津軽の苦しそうな声が聞こえてきてそちらを見ると、私と甘楽の胸に押し潰されていた。
慌てて離れれば、津軽はムキューという効果音がつきそうなくらいぐったりと甘楽に寄り掛かった。

「つ、津軽!大丈夫か!」

「ふにゅ…」

「ご、ごめんね津軽…私と一緒に休んでいようね。」

津軽を抱き抱える甘楽を見て思わず笑みを浮かべる。本当の家族みたいで。

「…シズちゃん可愛い。」

「甘楽、今はダメ。…寝る前に、ね?」

「シズちゃんったら本当に煽るの上手いよね、そんなこと言われたら余計に興奮しちゃうよ!」

私が女でよかったね!と甘楽は言いながらソファーに座った。甘楽が女じゃなかったら所構わず喘がされそうだ…

「…幸せ過ぎて怖いな。」

「まだ二ヶ月しか経ってないのにそれ言う?まだこれからだよ。いつまでも一緒に居ようね、そして数年後に言わせてあげる…甘楽無しじゃ生きていけないって、ね。」

「ばか、数年後どころか今言えるよ、心を込めてな。」

甘楽の黒い瞳が丸くなった。いつも驚かされてばかりだからたまには私も驚かせたいと思ってたけど、見事成功したようだ。この言葉に嘘偽りはないけど。

「もう、甘楽無しじゃ生きていけないよ。」




きっと、私たちなら
(きっと、幸せな家族になれるはず)


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素敵な小説を、妄想を並べる。のくれーぷさんにいただきました!もう、ほんとに、どうしてこんなにも文才があるのかまったくけしからん。
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