サイケデリックはとてつもなく精神が幼かったから、俺は後輩なはずなのにいつもサイケデリックの親のように世話をしていた。
「デリック、いつもありがと」
そんな毎日が続いていたある日、サイケデリックはにこやかに微笑みつつ俺に礼を言った。いつも礼など言わないサイケデリックだったから不信に思いつつもこくんと頷いて、サイケデリックに楽譜を渡した。滅多なことでは歌わない演歌。これとサイケデリックの礼は何か関係あるのだろうか?
考えてみたが何も思い付く情報がなかったから、必死に楽譜に書いてあるメロディーを覚えようと口ずさむサイケデリックをただ眺めた。
サイケデリックは寂しそうに、小さくて小さくて気を緩めたら聞こえなくなってしまいそうな声で俺の知らない曲を歌い始めた。楽譜とは違う歌、なんで歌うのだろう。俺にはさっぱり判らなかった。
 
 
 
 
 
 
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「つがるが、目覚めるの」
ふと、サイケデリックが苦しそうに呟いたから、ツガルと言う者を知らないから、俺は首を傾げた。「ツガルって誰?」尋ねてみたけどサイケデリックは苦しそうに俺たちの中でも一番大切なモノが埋め込まれている、人間で言えば心臓。を押さえ込むように服をぎゅうと握った。
「ツガルが嫌い?」「大好き」「じゃあなんで、苦しそうなの?」「つがるが目覚めたら、デリックとお別れになっちゃうから」
俺とお別れ?何馬鹿のことを言っているんだ、遂に故障か?と笑って言ってみるがサイケデリックは暗い表情のまま、ごめん、と一言だけ発した。
 
「やだ」
俺がこの世界から消えてしまいそうで、跡形もなく消えて無くなって皆が俺を忘れてしまいそうで、怖くて、涙が溢れ始めた。
「デリッ」「やだ。俺は消えない、消えてなるものか。」「デリック、お話、聞いて」
やだ、ともう一度言ったがサイケデリックは構わずに話し出した。
 
曰く、俺はツガルの代わりらしい。
故障したツガルのバックアップ、それが元の俺。
ツガルと俺は元は合わせてひとつの機械。
ツガルはもうすぐで目覚める。
俺は消えなければいけない。
 
それをサイケデリックから聞いたとき、俺は機械だと言うのにとても辛くて目からオイルがでてきた。ツガルの代わりだからサイケデリックは俺に甘えてきたりしていたのが、妙に悔しくて。
「デリック、好きだよ」
「ツガルの代わりだからな」
「ちがうよ、ひとつの機械としておれはデリックが好き」
「…ありがとう」
俺はお礼を言い、消えた。とても気分がよくて、こう言うものも悪くないと思った。
 
 
 
「つがる、おはよう」
 
 
 
20101109
意味不明だけど悲恋が書きたかったらしい。
 
 
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