どうも皆さんはじめまして。わたくし、森の中で知る人ぞ知る小物屋を営んでおります、六というものです。
微睡みに誘われるお昼時、今日はお客様も一向に見えず、暇を持て余しているので、皆さんに私のお店を紹介したいと思います。


まずはお店の名前。その名も、"ひんやり工房"。ネーミングセンスに関しては言わぬが吉です。私的にはいい名前だと思うんですけれどね。

さて、我が"ひんやり工房"ではもちろん名前通り、氷を使ったアクセサリーやら置物やらをメインに取り扱ってる。一番人気なのは簪。種類はざっと50ってとこだろうか。いやはや、作り出したら止まらなくてどんどん増えていくんですよね。お店に並べてあるのもほんの一部だから、全部捌くにはどれほどかかるのか。まあ、そもそもこんな人里離れた、観光ガイドブックにも滅多に載らないお店に来る人は決して多いとは言えないのだが。

しかし最近は口コミで各国に広まっているらしく、いろんな国の人達がやって来る。体感的に専ら女性客が多い。一般人だったり忍だったり、お偉いさんの遣いだったり遊女だったり様々で。男の人も彼女さんへのプレゼント用とかでたまに来店してくれています。


ここまでだとただの小物屋さんて感じなんだろうけれど、実はこのお店をやっているのには、不本意ながらもうひとつ目的がある。考えてみてほしい。これだけ外部から人が来れば各国の情勢もわかるでしょ?手に入れた情報で里に必要なものであれば、それを伝えるようにしてる。やぐらちゃ……ごほん、水影様も抜け目ないというか。お蔭で最近は里に帰れず仕舞いで。
今度やぐらちゃ……ごほん、水影様に文句言いに行こう。あ、でも門前払いされそうな予感がする。



「勘弁してよー……私だってたまには里に帰りたい。そして串丸さんのお面を今度こそ……」


私が忍になった時からの夢……そう、串丸さんのあのお面を剥がして素顔を拝むこと。毎回毎回チャレンジするたびに吊るされるか、首根っこ掴まれるかのどちらかで私の奇襲は終わる。なかなか容赦ない。

バタッとカウンターに突っ伏す。こんなとこお客様に見られたら。大丈夫、まだ客が来るような時間帯ではないから。



馬鹿みたいに開き直って堂々と突っ伏していると、ちりんと扉に付いている鈴の音が、静かな店内に響いた。

瞬間、全身の毛穴がぶわっと開いた気がした。



2016/05/23 改訂




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