僕は絢が好き。だから、絢に寄り付く奴はみーんな消す。……でも、あの女はそうすることが出来なかった。あの女が絢の幼馴染で親友だから、なんて理由じゃない。
名前は貴船水穂とか言っていた。絢がまだ幼い頃、一人公園で遊んでいた時に話しかけてきたらしい。僕はちょうど絢から離れていたから詳しいことは知らないけど。でも僕は思うんだ。貴船水穂は、僕がいない時を見計らって絢に接触したんじゃないかってね。


それからというもの、幼稚園、小学校、中学校……果ては今の高校。貴船水穂はまるで取り憑いているかのようにいつも絢の側にいた。絢は一番の親友、幼馴染と云って貴船水穂のことが大好きだった。自分にとって無くてはならない友だと思っていたみたい。何一つ疑ったことも、疑問に思ったことも、奇妙な違和感を感じていたことも無かった。絢、何で気づかないの?その女が……貴船水穂が、


一 度 で も 自 身 の 親 族 と い た こ と が あ っ た の ?


可笑しいでしょ?今まで出会ってから十四年間、奴が奴の母や父と一緒にいた姿を見たことが無いなんて。入学式でも、運動会でも、卒業式でも、一度たりとも。そもそも奴は気づけばいつも絢の隣にいて、それ以外どこにいたのかは判らない。それにさっきみたいに……いつも絢の側を浮遊していた僕を、まるで、"視えている"かのように漆黒の双眸で射抜いていた。その時に感じるのは、僕らが嫌う力。妖怪である僕らが寒気を憶えるのは、この世に二つ。その片方を貴船水穂は纏っている。初めは社家の血筋だと思っていた。でも違う、違ったんだ。あの女は……貴船水穂は……そんな甘いモノじゃなかった。




あいつはーー ×××だったんだ



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