僕は喜八郎。人ならざるもの。絢が産まれた時……いや、まだお腹にいた時から、僕は絢のことをずーっと視てきた。なんてったって、僕は絢のことが大好きだもの。そんなこと、本人の前じゃ絶対言わないけどね。さっきは絢に荷造りしてって頼まれたけど、実はもうとっくに終わってるんだ。あえてそれを言わない僕って相当へそ曲がりなんだなぁって思う。まぁ、否定はしないけど。

それでも。僕は時たま不安になることがあるんだ。"絢に嫌われやしないだろうか"ってね。絢だって僕の捻くれた言葉とか態度とか、分かっている。分かってくれているんだ。笑って許してくれるけど、本当はそれが作られたものだったら、内心怒りで沸えかえっていたらって、柄にも無く考える。生憎、僕は上位個体じゃないから人間の心を探るようなことは出来ない。拒絶の言葉が飛んできたら、って。嗚呼考えたくもない。ほら見てよ、これだけで僕の体は震えるんだ。絢は僕にとっての生きる意味。その本人が僕を否定したら、僕は消えてしまうかもしれないね。拒絶されたら、僕は狂ってしまうかもしれないね。簡単なことだ、人間を殺すのなんて。でも殺してしまえば、消えてしまえば、僕はあの約束を果たすことができなくなってしまう。儚くて、でも強かったきみの最期も、やっぱり無惨で悲惨だったね。確かに僕は哀しかったよ。涙なんてなかったけど。でも代わりに絢が泣いてくれたから。間抜けなくらい顔をぐちゃぐちゃにして、部屋に閉じ籠って泣いていたね。そんなきみを僕はすぐ隣で見ていた。慰めの言葉なんて、僕は知らない。ただ絢の隣にいること。僕がするのはそれだけ。

……何故僕がこれほどにも絢を気にかけているのかって?それは至極単純明快。絢のことを好いている、想っている、ただそれだけのことだよ。
空っぽだった僕の胸に芽生えた恋情ー
誰にも譲る気はない。

もし絢の心が何処かへ行ってしまうのなら、いっそ彼女を殺してしまおうかー
彼女と一緒になれるのなら、それはそれで構わない。

そしたらずぅーーっと
一緒、だよね?




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