年を重ねるごとに修復の余地は少なくなる。些細な喧嘩で殴りあってわかりあえた頃とは違う。がんじがらめになった常識やら何やらが俺たちを縛って身動きもできない。あぁ俺は昔からそうだが、お前はあんなにも自由な人間だったのに。翼が生えたような軽い体でつまらない制約を飛び越すことができたのに。

「男同士だし」
「うん」
「プロだし」
「うん」
「俺だって考えるよ」
田島悠一郎はもう子どもではない。精悍な顔つきも少しこけた頬も伸びた背も体じゅうにあるしなやかな筋肉もすべて。その体がどんなに素晴らしいプレーを生み出すか俺は一番に知っている。才能だけではないかたち。
太陽のように眩しい子どもだった彼は既に色んなことを知ってしまった。常識も、しがらみも、大人の世界を成り立たせるすべてに田島だって参加している。

「でもさ俺は」
「…」
「花井とずっと一緒にいたいって思う」
「…」
「辛いときとか、嫌になったりとかしても、やっぱりお前のいない未来は嫌だ」
「…うん」
「よぼよぼのおじーちゃんになっても、一緒にいたいよ」

俺を抱き締める太い腕が暖かい。「だからごめん、別れてやんないや」と困ったように笑う田島は大人っぽくて、でも変わらず真っ直ぐだった。田島に、翼はもうない。だけど地面を踏み締めて一緒に歩いてゆける。
はぐれそうなら手を繋いで。
そしていつかお前の言うようによぼよぼのじいさんになった俺たちは、緩やかに和やかに、今日の記憶を笑えるだろう。そりゃあ大変だったけど、この手を離さなくて、ほんとうに良かった、ってさ。

「そうだろ?」
「うん、そーだよ」

朗らかに笑う、それは少しだけ太陽の面影を残していた。




100428/田島と花井
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